結婚指輪に誕生石を入れるということ

家族の誕生石を並べたフルオーダーの手作り結婚指輪とデザイン画

先に、意外に知られていないことを書きます。誕生石は、世界共通の決まりではありません。国や団体によって内容が違います。日本では全国宝石卸商協同組合が定めていて、2021年12月に63年ぶりの改訂が行われました。このとき10種類が追加され、全部で29石になっています。

つまり、少し前の本やサイトに載っている一覧と、今の一覧は違います。「自分の月の石はこれだと思っていたのに」ということが、実際に起こります。まずはそこから確かめてください。

誕生石をあしらった手作り結婚指輪
目次

誕生石を結婚指輪に入れる、という選び方

結婚指輪に石を入れる理由は、人それぞれです。私たちが工房でうかがう範囲でも、こんな話が出ます。

  • おたがいの誕生石を、相手の指輪に入れる。自分の石が、相手の手にある
  • ふたりの石を、それぞれの指輪に並べて入れる
  • 子どもの誕生石を、あとから足す
  • 結婚した月の石を入れる。ふたりの誕生月ではなく、はじまりの月として

どれが正解ということはありません。むしろ、誕生石を入れないという選択も同じくらい真っ当です。石が入らないシンプルな一本を10年、20年と使い続けているご夫妻もいらっしゃいますし、それで何かが足りないということはまったくありません。

ここで一つだけ、正直に書いておきます。石ごとの「石言葉」については、私たちは断定して書かないことにしています。出典がひとつに定まっていないからです。同じ石でも、本によって書いてあることが違います。「絆を意味すると言われています」くらいの言い方なら誠実ですが、「この石には◯◯の力があります」と言い切るのは、私たちの仕事ではないと思っています。

石を選ぶ理由は、意味づけよりも「その色が好き」「その月がふたりにとって大事」で十分です。むしろそのほうが、10年後に説明しやすい理由になります。

日本の誕生石12ヶ月一覧(2021年12月改訂版)

全国宝石卸商協同組合が公表している現行の一覧です。備考欄の「2021年追加」が、63年ぶりの改訂で加わった10石です。

月石名備考
1月ガーネット
2月アメシスト/クリソベリル・キャッツアイキャッツアイは2021年追加
3月アクアマリン/サンゴ/ブラッドストーン/アイオライト後ろ2つが2021年追加
4月ダイヤモンド/モルガナイトモルガナイトは2021年追加
5月エメラルド/ヒスイ(翡翠)
6月真珠/ムーンストーン/アレキサンドライトアレキサンドライトは2021年追加
7月ルビー/スフェーンスフェーンは2021年追加
8月ペリドット/サードニクス(サードオニキス)/スピネルスピネルは2021年追加
9月サファイア/クンツァイトクンツァイトは2021年追加
10月オパール/トルマリン
11月トパーズ/シトリン
12月トルコ石/ラピスラズリ/タンザナイト/ジルコン後ろ2つが2021年追加

見ていただくと分かるとおり、多くの月に複数の石があります。ひとつに絞られていないので、「この色は好みじゃない」という場合でも、同じ月の別の石という逃げ道があります。

なお、海外の一覧では月ごとの石が違うことがあります。どちらが正しいという話ではなく、定めている団体が違うだけです。話が食い違ったときは、そのことを思い出してください。

家族の思い出を重ねた結婚指輪

どこに入れるか。内側と表面のちがい

石を入れる位置は、大きく2つに分かれます。

内側(指の側)に埋める

指輪の内側に、地金の面と平らになるように石を沈める入れ方です。外からは見えません。自分だけが知っている、という置き方になります。

内側は指に触れる面なので、出っ張らせないのが前提になります。石を沈めて周囲の地金で囲う形にすれば、着け心地はほとんど変わりません。逆に言うと、大きな石は内側には向きません。ごく小さな石を、そっと沈める形が基本です。

内側には刻印も入ります。文字と石をどう同居させるかは、削り始める前に決めておくと迷いません。内側の刻印そのものの考え方は内側刻印の基本にまとめています。手書きの文字を残したい場合は手法が変わるので、手書き文字の刻印もあわせてご覧ください。

表面(外側)に留める

見せるための入れ方です。真ん中に一石、脇に小さく並べる、斜めのラインに沿わせるなど、デザインの自由度は高くなります。そのぶん当たり方の設計が大事になります。

指輪は手の先にあって、いちばんぶつかる場所です。ドアノブ、机の角、買い物袋の持ち手。表面に出っ張ったものは、そこに当たります。だから、石をどれだけ沈めるか、周囲の地金でどう守るかが、見た目と同じくらい重要です。

色石とダイヤを組み合わせた結婚指輪

石の大きさと、指輪の幅の関係

「どのくらいの大きさの石が入りますか」というご質問はよくいただきます。答えは指輪の幅と厚みしだいです。

石を入れるには、石そのものの直径だけでなく、まわりを囲む地金の余白が要ります。細い指輪に大きな石を載せると、囲う地金が足りず、留めが弱くなったり、指輪の断面が薄くなったりします。だから「幅を細くしたい」と「大きな石を入れたい」は、しばしば正面からぶつかります。

このあたりは幅の話とセットで考えるのが早道です。幅ごとの見え方と使い勝手は結婚指輪の幅は何ミリがいいかで詳しく扱っています。先に幅を決めてから石を考えるか、石を決めてから幅を調整するか。どちらから入るかで、話の進み方が変わります。

なお、石留めなどのオプションは加工費にあたる部分で、見積書では別項目として並べます。100&1は制作基本料・地金代・加工費の3層をすべて単価×数量で開示しているので、石を入れるといくら増えるのかは、その場で数字として見えます。金額の考え方そのものは手作り結婚指輪の値段の内訳をご覧ください。

金額の目安だけ先に知りたい、という方へ。
見積りシミュレーターなら、地金代と加工費を分けた概算をその場で出せます。来店の前に、数字だけ確かめておくこともできます。相談だけでも大丈夫です。

硬さの話を、正直に

石には硬さの差があります。ここは避けて通れないので、断定にならない範囲で書きます。

判断の基準になるのは、砂埃に混じっている石英です。石英はモース硬度7、ビッカース硬度でいえばHV1100前後。私たちの生活のあちこちに漂っています。これより柔らかいものは、日常のなかで細かい傷が入りうるということになります。

たとえば真珠やサンゴ、トルコ石、オパールは、石英より柔らかい部類に入ります。ダイヤモンドやルビー、サファイアは石英より硬い側です。ただし、だから前者が「日常使いに向かない」とは言い切りません。着け方も、生活も、人によってまったく違うからです。水仕事のたびに外す方と、一度も外さない方では、10年後の姿がぜんぜん違います。

言えるのはここまでです。指輪は手の先にあって当たりやすいので、柔らかい石ほど、当たり方に気をつける必要があります。そのうえで、留め方を工夫する(沈める、地金で囲う)、位置を選ぶ(内側にする)、外す場面を決めておく、といった手が打てます。

ちなみに、硬い石を選べば指輪そのものが傷つかないわけでもありません。地金の側は金でもプラチナでも石英より柔らかいので、どんな指輪も「傷つかない」は成立しません。そのうえで、どう付き合うかを決めるほうが健全です。

小さな誕生石を留めた結婚指輪の細部

決める前に、確認しておきたいこと

1. 実物を見てから決める

これがいちばん大事です。色石は、写真と実物の差が大きく出ます。同じ「アクアマリン」でも、濃さも透明感も一つひとつ違います。画面で決めた色と、手元に来た色が違ったというのは、色石ではふつうに起こることです。工房で実際の石を手に乗せて、光を変えながら見てください。数分でできることです。

2. 自分の生活での当たり方を想像する

仕事で手袋をするか、水を使うか。その手で、その指輪が一日どう動くかを思い浮かべてください。想像しにくければ、生活の話をしていただければ留め方の案を一緒に考えます。

3. あとから追加できるかを聞いておく

「今は入れないけれど、子どもが生まれたら足したい」というご相談もいただきます。あとから石を留められるかどうかは、指輪の形と厚みで変わります。将来足すつもりがあるなら、そのことを最初に伝えてください。余白を残した設計にしておけば、選択肢が残ります。逆に、後から思いついたときには構造的に難しい、ということも起こりえます。

4. 何を刻むかと、どこに石を置くかを一緒に考える

内側は、文字と石が場所を取り合います。刻む言葉の候補は刻印アイデア50にまとめました。石と文字、どちらを優先するかを先に決めておくと、当日の作業がスムーズです。

デザイン全体の考え方や、他の仕上げとの組み合わせはデザイン・種類のページにまとめています。実際の作例は制作事例でご覧いただけます。

100&1では、ふたりで原型(ワックス)を削り、長年の宝飾業界で培われた知見を持つ職人が鋳造・仕上げをします。石をどこに、どのくらいの深さで入れるかは、原型の段階で決まります。だからこそ、削り始める前の相談を大事にしています。

よくある質問

誕生石は世界共通で決まっているのですか?

いいえ。国や団体によって定義が異なります。日本では全国宝石卸商協同組合が定めており、2021年12月に63年ぶりの改訂で10種類が追加され、全29石になりました。海外の一覧とは内容が違う月があります。

自分の誕生月の石が、昔調べたものと違います。

2021年12月の改訂で石が追加された月があるためだと思われます。改訂では既存の石が削られたわけではないので、以前からの石もそのまま誕生石です。どちらを選んでも問題ありません。

誕生石を入れると、いくら追加になりますか?

石留めなどのオプションは加工費にあたる部分で、見積書では別項目として並べます。石の種類・大きさ・個数・留め方で変わるため、金額は具体的なご希望をうかがってからお出しします。考え方は値段の内訳をご覧ください。

内側に入れると、着け心地は変わりますか?

石を地金の面と平らになるまで沈める形にすれば、大きくは変わりません。ただし、大きな石を内側に入れることは難しく、ごく小さな石を沈める形が基本になります。実物のサンプルを着けてお確かめください。

結婚指輪をつくったあとから、石を足すことはできますか?

指輪の形と厚みによります。可能な場合もありますが、構造的に難しいこともあります。将来足す可能性があるなら、つくる前にお伝えください。余白を残した設計にしておけます。

誕生石を入れるかどうかは、指輪の良し悪しを決めることではありません。入れても入れなくても、10年後に手元にあることは変わらないからです。それでも入れたいと思うなら、その気持ちはたぶん「相手の生まれた月を、自分の手に置いておきたい」に近いものだと思います。そういう理由なら、意味を調べなくても十分に立派です。

一覧を見て、気になる石があったら、まず実物を見に来てください。決めなくて構いません。手に乗せてみて「思っていたのと違う」と分かるだけでも、その日は前に進んでいます。

この記事を書いた人

三代 二栄のアバター 三代 二栄 アトリエ100&1 創業者

アトリエ100&1創業者。横浜生まれ。宝飾業界約40年、宝石店の企画・コンサルティング20年以上。手作り結婚指輪の仕組みをいち早く確立し、2009年に金沢で創業。3,000組以上の指輪選びに立ち会う。信条は「毎日着けて30年もつか」。

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