宝飾用語集

結婚指輪を探していると、聞き慣れない言葉に出会います。
鍛造、鋳造、溶湯鍛造。ビッカース硬度に、モース硬度。

やっかいなのは、これらの言葉が売り手によって少しずつ違う意味で使われていることです。とくに「鍛造」は本来の意味とは別の製法にも使われていて、それを知らずに選ぶと「硬いはずなのに傷がついた」ということが起こります。

このページは、そうした誤解の生まれやすい言葉を、工房の立場から正直に説明したものです。専門用語をありがたがるためではなく、ふたりが納得して選ぶために書いています。

手のひらに乗せた結婚指輪のワックス原型
指輪は、この樹脂の原型から生まれます。

か行

貴石(きせき)

モース硬度7以上の、特に硬く希少性の高い石。

ダイヤモンド・ルビー・サファイヤ・エメラルドがこれにあたります。砂埃に混ざる石英のモース硬度が7なので、硬度が7を下回る石は日常生活の中でも傷がつきやすく、宝石としての輝きが失われていきます。だからこそ、いつまでも美しく輝き続けるこれらの石は、特別に「貴石」と呼ばれてきました。

それ以外の宝石を半貴石と呼びます。

モース硬度7以下でも、美しさや希少性から貴石として扱われる宝石もあります。分類は絶対的なものではありません。

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た行

鍛造(たんぞう)

型を使わず、熱した地金を叩いて成形する技法。もとは刀鍛冶など、生活に密着した道具をつくる技術。

手作り結婚指輪の制作体験中、金槌などの工具を手に笑顔を見せるカップル。工房でふたりが指輪づくりを楽しむ様子

元来のジュエリー業界における鍛造とは、型を使わずに熱した地金を叩いて成形する手法のことを指します。純粋な鍛造では金属の厚みなども考慮されるため、近年の曲がったデザインや華奢なデザインには不向きだといわれています。

最近では、金型に溶けた金属を流し込みプレスで圧力をかけて硬度を高める「溶湯鍛造」を、単に「鍛造」と表現することも多くなりました。しかし大きく分類すれば、その製法は「鋳造」に近いものです。

さらに極端な例では、彫金的な製作の過程に「金属を赤くなるまで熱して叩く」工程を入れただけで鍛造と称している場合もあります。途中の工程だけを取り出しても、本来の鍛造とは言えません。(すべての工房が当てはまるわけではありません)

長所

  • 鋳造と比べて硬度が高くなります。

短所

  • 複雑な形状の製作は非常に困難です。
  • 職人の手作業のため、大量生産に向きません。
  • 職人の手作業のため、価格が高くなります。

いま宝飾業界では、製造方法にかかわらずビッカース硬度HV200前後かそれを超えるものを「鍛造」と表現することが増えています。ただしHV200という硬度は、ステンレスのシンクや空気中に舞う塵よりも低い数値です。つけて生活していれば、必ず傷はついていきます。「鍛造=硬い=傷つかない」と思って選ぶと購入後に戸惑うことになりますが、硬度の数字を知っていれば当然のことなのです。

くわしくは 手作り結婚指輪の強度は大丈夫?毎日つけて30年もつ作り方 でも解説しています。

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鋳造(ちゅうぞう)

型に溶けた金属を流し込んで成形する手法。市販されているジュエリーの多くがこの製法でつくられています。

リューターでワックス原型を削る女性。手作り結婚指輪の制作体験
お客様に手を動かしていただくのは、この原型づくりまでです。

一般的な商品は、次の手順で元原型をつくり、それを複製したものです。

  1. ジュエリーワックス(樹脂製の蝋材)で原型をつくります。
  2. 原型に湯口を付けて石膏に埋め込みます。
  3. 石膏を高温で焼きます。するとワックスが溶け出て、そこが空洞になります。
  4. 原型の形の空洞ができた石膏に、高温で溶かした金属を湯口から流し込み、金属の元原型をつくります。
  5. 金属の元原型にさらに湯口を付け、生ゴムに埋めて低温で焼き固め、半分に割って金属を取り出します。これがゴム型(量産型)になります。
  6. ゴム型に溶けた樹脂ワックスを流し込んで固め、ワックス原型をつくります。
  7. 元原型をつくるときと同じ要領(2〜4)でワックス原型を石膏に埋め、貴金属(地金)を流し込んでジュエリーにします。

アトリエ100&1でお客様に行っていただく作業は、(1)のジュエリーワックスで原型をつくるところまでです。それ以降(2〜7)の作業は職人が行いますので、製造方法・品質は市販品と変わりありません。

長所

  • 複雑な形状を製作できます。
  • 型を用いて加工するので、大量生産に向いています。
  • ゴム型を保管しておくことで、年数が経っても複製できます。

短所

  • 鍛造と比較すると、硬度は高くありません。

アトリエ100&1では、鍛造以上の硬度に仕上げる「金属硬化処理」が可能です。素材によってはビッカース硬度HV200を大幅に超える硬度処理を、お求めやすい価格でご提供しています。素材別の硬度はお問い合わせください。

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彫金(ちょうきん)

成形した金属をたがねなどで彫り、模様を施していく技法。

かつて鍛造が「生活に密着する道具をつくるために、金属を高温に熱して叩く刀鍛冶などの技法」であったのに対し、彫金は「金属をたがねなどで彫り、かんざしや趣向品に飾りを付ける」といった装飾的な用途で使われていました。金属を彫ると書くのも、そのような由来からです。

手作り結婚指輪の制作体験で、男性が女性の手に添えて糸鋸で地金を切る様子。工房で笑顔のカップルがふたり一緒に指輪づくりに取り組む温かな風景

それに対して近年の彫金教室は、たがねで装飾を彫る難しい作業はほとんどせずに、一般的な宝飾品製造に関わる技法を教わる教室として存在します。叩いたり、ロウ付けしたり、石を留めたり、飾りを付けたりしてジュエリーをつくっていくことが多いです。アトリエ100&1では、これを「彫金的手法」と呼んでいます。

彫金的手法で指輪を製作する場合、地金を直接叩いて円め、ロウ付けして仕上げるため、シンプルなデザインしかつくることができません。

長所

  • 比較的安価に製作できます。
  • 基本的に、つくったその日にそのまま持ち帰ることができます。
  • 直接金属を叩いたり、曲げたり、彫ったりするので「つくっている感」を得やすいと言えます。

短所

  • 複雑な形状の製作は困難です。
  • 彫金的手法で鍛造製品をつくることは不可能ですし、鍛造としての硬度も期待できません。

実際には彫金的手法であるのに、地金を熱して叩く作業をさせることで「鍛造」と表現しているショップもあるようです。鍛造であるか否かは、最終的にどのように仕上げるかで決まります。そこを開示していない場合は、確認したほうがいいでしょう。

工房を選ぶときの確認事項は 手作り結婚指輪の工房選び、5つのチェックポイント にまとめています。

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は行

半貴石(はんきせき)

モース硬度7以下の宝石。貴石以外の宝石のこと。

モース硬度7以上の特に硬く希少性の高い石、ダイヤモンド・ルビー・サファイヤ・エメラルドを貴石といい、それ以外の宝石を半貴石といいます。

半貴石であっても、定期的にメンテナンスすることで美しい輝きを放ち、心を癒やしてくれます。また、その多彩な種類の中から自分に合った宝石を見つけ出す喜びがあります。

モース硬度7以下でも、美しさなどから貴石とされる宝石もあります。

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ビッカース硬度

金属の硬さを表す尺度のひとつ。主に圧力をかけたときの凹みで、その数値を表します。

木のブロックの上で電動リューターを使い、緑のワックス原型を削り整える手元のクローズアップ。手作り結婚指輪の仕上げ工程

数値が高いほど硬く、傷がつきにくくなります。そのため最近の宝飾業界では、製造方法に関わらず、ビッカース硬度HV200前後またはそれを超えるものを「鍛造」と表現することが多くなっています。

しかし「硬度が高いほど傷つきにくい」という表現は正しくても、「鍛造は傷が付かない」という認識は間違いです。日常生活の中にはHv200を超えるものが数多く存在します。たとえば砂埃に混ざる石英(せきえい)などはHv1100あり、これが付着して擦れることで、指輪は風の強い日に身に付けているだけでも傷が付いていきます。

地金における硬度

純度100%の純金や純銀は柔らかすぎるため、そのままではジュエリーに向きません。それを解決するために、銅やパラジウムなどを混ぜた合金にすることで、強度を持たせて製品に仕上げます。

  • 純金 Hv30→ 18金 Hv120〜150
  • 純銀 Hv25→ SV925 Hv65
  • 純プラチナ Hv40→ Pt900 Hv100〜130

ロジウムメッキの表面ビッカース硬度はHv600。この特性を活かして、プラチナ商品にはメッキを施すのが当たり前の処理となっています。

アトリエ100&1では鍛造以上の硬度に仕上げる「金属硬化処理」が可能です。素材によってはビッカース硬度HV200を大幅に超える硬度処理を、非常にお求めやすい価格にてご提供しております。素材別による硬度はお問い合わせください。

宝石など鉱物に対する硬さの尺度にはモース硬度があります。強度の考え方は 手作り結婚指輪の強度は大丈夫? でもくわしく扱っています。

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ま行

モース硬度

鉱物に対する硬度の尺度のひとつ。1〜10の10段階で表します。

ここでいう硬さの基準は「傷付きにくさ」であり、叩いた時の「割れにくさ」ではありません。したがって「ダイヤモンドはモース硬度10だから絶対に割れないか」といえば、結晶の方向性に対して強い衝撃が加われば割れることはあります。これを劈開性(へきかいせい)といいます。

金属に対する硬さの尺度にはビッカース硬度があります。

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や行

湯口(ゆぐち)

成形型やゴム型に、溶けた金属や樹脂ワックスを流し込むための口(通り道)。

鋳造の工程で使われる言葉です。どの場面で登場するかは、鋳造の項の手順(2)(4)(5)をご覧ください。

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溶湯鍛造(ようとうたんぞう)

金型等に溶けた金属を流し、プレス等で圧力を掛けて硬度を高める製造技法。

溶湯鍛造という製法は「鍛造」と名前が付いているために本来の鍛造と混同されがちですが、大きく分類すればその製造方法は「鋳造」に近いものです。

元々は強度や精度を求める自動車業界などの工業技術で、アルミニウムのような柔らかい素材の硬度を高めることで、軽くて強い金属を製造することが可能になりました。

近年までジュエリー業界ではこのような製法を用いることはありませんでしたが、海外のブランドが採用し、それを「鍛造商品」と称して販売を始めてから、日本でも見かけるようになりました。

長所

  • 本来の鍛造と比較して、安価に金属の硬度を高めることができます。
  • 型を用いて加工するので、大量生産に向いています。

短所

  • 本来の鍛造ほどの硬度は得られません。
  • 指輪のサイズ変更等で修正する際、再度熱を入れることで焼きなましが起こり、硬度が低下します。

「鍛造」という言葉が指すものが売り手によって違う、という話の中心にあるのがこの製法です。硬さを重視して選ぶのであれば、製法の名前ではなくビッカース硬度の数値を聞くのが確実です。

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わ行

ワックス(ジュエリーワックス・樹脂ワックス)

ジュエリーの原型を成形するための、樹脂製の蝋材。

ワックス原型の細部を加工する手元のアップ

硬さによって色の違うワックス樹脂があります。青・緑・紫が中心です。粘土のように自由な成形ができる粘土ワックスや、細い線や紙のようなシート状のワックスも存在します。これらのワックスを使い、原型師はジュエリーの原型を成型していきます。

アトリエ100&1でふたりに手を動かしていただくのは、このワックスで原型をつくる工程です。当日の流れは 制作の流れ をご覧ください。

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用語は順次追加していきます。「この言葉の意味がわからない」というものがあれば、ご相談のときに気軽に聞いてください。言葉の定義から一緒に整理していきます。

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まだ来店を決めていなくても、具体的なデザインが決まっていなくても大丈夫です。
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ふたりにとって、どんな結婚指輪が心地よいのか。
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