結婚指輪で揉める・喧嘩になるのはなぜ?ふたりで決めるための順番

アトリエ100&1での手作り結婚指輪の打ち合わせ全景

結論から書きます。結婚指輪や婚約指輪で揉めるふたりは、相性が悪いのではありません。決める順番が逆になっていることがほとんどです。多くの方はデザインから入り、次に値段を見て、最後に「そもそも何のための指輪か」で意見が割れます。順番を「意味 → 総額 → デザイン」にひっくり返すだけで、揉めどころの大半は消えます。この記事では、手作り結婚指輪の工房として3,000組以上のふたりの相談に立ち会ってきた経験から、よくある揉め方と、その順番の直し方を書きます。婚約指輪の要・不要やお返しで気まずくなっているふたりにも読めるようにしました。

工房の相談テーブルで指輪について話し合うふたり。揉めどころは相性ではなく決める順番にある
目次

先に、正直なことを書いておきます

指輪屋が「指輪で揉めないコツ」を書くのは、少し都合がよく見えると思います。だから最初に線を引いておきます。揉めている中身が「指輪」なら、この記事で解けます。揉めている中身が「話を聞いてもらえない」なら、指輪を変えても解けません。 後者は指輪の問題ではなく、ふたりの話し方の問題です。それでも、指輪選びはふたりが結婚準備で最初にぶつかる「お金と好みを同時に決める作業」なので、ここでの決め方は、そのあとの結婚式や家計の相談の練習になります。

もうひとつ。婚約中に喧嘩が増えること自体は、珍しいことではありません。相談に来られるふたりの多くが、結婚が決まってから口論が増えたと言います。決めることが一気に増えた時期に、意見が違って当たり前です。喧嘩が増えたから合わないのだ、と結論を急がないでください。

結婚指輪・婚約指輪で揉める5つのパターン

工房で見てきた揉め方は、だいたい次の5つに収まります。

揉めどころよくある言い分本当の争点
① 予算の差「そんなに出す?」「一生ものなのに?」指輪に何を求めているかが違う
② デザインの好み「太いのは嫌」「細いのは頼りない」ふたりで同じ形にすべきだと思い込んでいる
③ 婚約指輪の要・不要「いらないと言ったのに」「本当はほしかった」「いらない」の意味がずれている
④ お返し・費用の分担「半返しって義務?」「折半でいいよね」慣習と、ふたりの家計感覚の衝突
⑤ 親の意見「うちの親がプラチナじゃないとって」誰の指輪かが曖昧になっている

どれも「相手がわかってくれない」に見えますが、表に書いたとおり、争点は別のところにあります。順に見ていきます。

① 予算で揉める:金額の前に「何年つけるか」を決めていない

「ペアで20万円で十分」と「30万円は出したい」がぶつかるとき、ふたりは同じものの値段を比べているようで、違うものを見ています。片方は「記念の品」、もう片方は「毎日30年つける道具」を想像しています。金額の差は、この前提の差です。

だから、金額より先に決めるべきことは「この指輪を、どのくらいの期間、どのくらいの頻度でつけるつもりか」です。毎日つけて30年もたせたいなら、厚みと地金量が必要になり、金額はそこから決まります。記念として持てればよいなら、別の答えがあります。どちらが正しいという話ではなく、前提を揃えてから金額を見る、という順番の話です。

金額の中身については、私たちは料金・素材のページで、基本料・地金代・加工料を単価と数量に分けて公開しています。「なぜこの値段か」が見えると、予算の話は「高い・安い」から「どこにお金をかけるか」に変わります。揉めているふたりに、まず内訳を見てもらうのはそのためです。

② デザインで揉める:ふたりで同じ形にしなくていい

「お揃いにしたいのに、相手が違う形を選ぶ」という揉め方も多いです。ここで知っておいてほしいのは、結婚指輪は同じデザインでなければいけない決まりはないということです。男性は幅広で女性は細め、というのも業界がつくった型で、義務ではありません。

私たちの工房では、ふたりで1つの原型をつくり、そこから幅や仕上げを変えて一対にする方法をとっています。同じ原型から生まれた指輪なので「ふたりの指輪」であることは変わらず、幅や質感はそれぞれの好みに合わせられます。表面の見た目は違っても、内側に同じ文字を刻めば、それがふたりの共通点になります。デザインの好みが違うことは、揉める理由ではなく、指輪をふたつの形にする理由です。

幅と仕上げの違う一対の手作り結婚指輪。同じ原型から生まれれば、形が違ってもふたりの指輪になる

③ 婚約指輪の要・不要で揉める:「いらない」の意味を確かめる

「婚約指輪はいらないと言われたのでなしにした。あとで、本当はほしかったと言われた」。逆に「いらないと言ったのに、勝手に高いものを買ってきて家計が心配」。どちらも工房で聞く話です。

「いらない」には、いくつも意味があります。お金がもったいない。普段つけないものに使うのが惜しい。ダイヤの大きさで比べられるのが嫌。本当はほしいけれど遠慮している。同じ「いらない」でも、対処はまったく違います。ここは推測せず、本人に「どの意味のいらない?」と聞くしかありません。

そのうえで、選択肢は「立派な婚約指輪を買う」か「なし」かの二択ではありません。普段づかいできる小さな石の指輪にする、ペンダントにする、結婚指輪に少し予算を寄せて一本を良くする、といった中間があります。婚約指輪の代わりの考え方は婚約ペンダントという選び方にまとめました。二択で揉めているなら、三つ目の案を出すのが早道です。

④ お返し・費用分担で揉める:慣習は参考、決めるのはふたり

「婚約指輪をもらったら半返し」「結婚指輪は男性が出すもの」という慣習は、いまも相談の場に出てきます。ただ、これは地域や世代でばらつきが大きく、決まりではありません。片方が慣習を義務だと思い、もう片方が知らない、というずれが揉める原因です。

決め方はひとつです。慣習を「参考情報」として一度テーブルに出し、ふたりの家計にとって無理のない形を、ふたりで決める。 折半でも、どちらかが多めに出しても、お返しをなしにしても、ふたりが納得していれば正解です。親御さんに説明が必要なときは、「ふたりで話し合ってこう決めた」と言えることのほうが、慣習どおりにすることより効きます。

⑤ 親の意見で揉める:誰の指輪かを言葉にする

「親がプラチナじゃないと恥ずかしいと言う」「親戚に見せるのに手作りは不安がられた」。親御さんの意見は、ふたりを思ってのものなので無視はできません。ただ、毎日その指輪をつけるのはふたりです。

こういうとき私たちがお伝えしているのは、素材の事実です。プラチナと金に品質の優劣はなく、性格が違うだけです。18金も10金も、合金の配合で日常づかいに向いた硬さに調整されています。この事実をふたりが説明できれば、親御さんの不安は「よく調べているね」に変わることが多いです。反対を押し切るのではなく、ふたりが選んだ理由を、ふたりの言葉で言えるようにしておく。それが親の意見との付き合い方です。

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揉めないための順番:意味 → 総額 → デザイン

5つのパターンに共通する直し方が、決める順番です。

  1. 意味を決める。 この指輪を、どのくらいの期間、どんな場面でつけるか。毎日30年なのか、式と記念日なのか。婚約指輪は必要か、必要なら普段つけたいか。ここが揃うと、①③⑤の揉めどころは消えます。
  2. 総額と内訳を見る。 意味が決まったら、それに必要な厚み・素材・加工を積み上げて総額を出します。誰がいくら出すかもここで決めます。内訳が見えていれば、②④の議論は「削るならどこか」という具体的な話になります。
  3. 最後にデザインを決める。 ふたりで同じ形でなくてよい、という前提で、それぞれの好みを出します。共通点は内側の刻印や原型で持たせればよいので、表面の好みが違っても揉める理由がなくなります。

多くのふたりがこの逆の順番で始めるので、途中で「そもそも何のために」に戻って言い合いになります。最初に一度だけ、意味の話をしておいてください。10分で済みます。

素材・幅・厚みを書き込む設計シート。意味と総額が決まってから、デザインを最後に決める

揉めても大丈夫なふたりに共通していたこと

工房の創業者の三代は、宝飾業界に40年、手作り指輪の相談に20年近く立ち会ってきました。その中で「このふたりは大丈夫だ」と感じたふたりに共通していたことが3つあります。

  • 何でもよく話す。 相談中に、片方がさりげなく発した一言に、もう片方が反応する。聞き流さない。
  • 共通の興味がある。 指輪でも旅行でも食べ物でも、ふたりで面白がれるものがひとつある。
  • よく笑う。 意見が食い違っても、最後にどちらかが笑って場が戻る。

もうひとつ付け加えるなら、揉めたときに折衷案を探せることです。仲の良いふたりも口論はします。違うのは、自分の意見を言いながら相手の意見も聞き、真ん中を探しているところです。言いたいことを飲み込んで我慢するより、指輪の段階で全部出しておくほうが、あとで爆発しません。

別れたほうがいいのか、と思ったら

婚約指輪や結婚指輪の話をきっかけに「この人と結婚していいのか」まで考えてしまう方もいます。工房が答えられる範囲を超えますが、ひとつだけ判断の目安を書いておきます。揉めている中身が指輪の値段や形なら、それは決め方の問題で、直せます。揉めている中身が「話を聞いてくれない」「勝手に決める」なら、それは指輪の話ではありません。 後者なら、指輪の話はいったん止めて、話し合いの仕方そのものを話題にしたほうがいいです。

指輪は、結婚準備で最初にふたりが「お金と好みを同時に決める」練習台です。ここで決め方の型ができると、式場も、新居も、家計も、同じ型で決められます。逆に言えば、ここで揉めきれずに片方が我慢すると、そのあとも我慢が続きます。指輪くらい、ちゃんと揉めておいていいと私たちは思っています。

よくある質問

結婚指輪の予算で揉めています。相場に合わせれば解決しますか?

相場は参考にはなりますが、解決にはなりません。揉めている原因は金額そのものではなく、「何年つける指輪か」の前提がふたりで違うことがほとんどだからです。先に「毎日つけて何年もたせたいか」を揃えて、そのために必要な厚みと素材から金額を組み立ててください。内訳の見方は料金・素材のページにまとめています。

婚約指輪はいらないと言われました。本当に用意しなくていいですか?

「いらない」の意味を本人に確かめてください。お金がもったいない、普段つけないものに使うのが惜しい、遠慮している、で対処が変わります。立派な婚約指輪か、なしか、の二択ではなく、普段づかいできる小さな石や婚約ペンダントという中間もあります。

デザインの好みが合いません。お揃いにしないと変ですか?

変ではありません。結婚指輪が同じデザインでなければいけない決まりはなく、幅や仕上げが違う一対はごく普通にあります。私たちの工房では、ふたりで1つの原型をつくり、そこから幅や質感を変えて一対にできます。共通点は内側の刻印や原型で持たせられます。

お返しや費用の分担で気まずくなりました。決まりはありますか?

決まりはありません。半返しや「男性が出す」は地域や世代で差のある慣習で、義務ではないです。慣習を参考情報として一度出したうえで、ふたりの家計に無理のない分け方をふたりで決めれば、それが正解です。

婚約してから喧嘩が増えました。相性が悪いのでしょうか?

結婚が決まると決めることが一気に増えるので、口論が増えるのはよくあることです。相性の問題と結論を急がないでください。目安として、揉めている中身が指輪の値段や形なら決め方の問題で直せます。「話を聞いてくれない」が中身なら、指輪の話をいったん止めて、話し合いの仕方を話題にしたほうがよいです。

揉めている途中で相談に来ていただいて、かまいません。むしろ、その状態で来られるふたりのほうが、話が早いことが多いです。私たちは「安いとも高いとも言わず、内訳を見せて、選ぶのはふたり」という進め方をしています。金沢店・横浜店とも完全予約制で、相談だけのご来店も歓迎です。どちらの言い分も、聞かせてください。

この記事を書いた人

三代 二栄のアバター 三代 二栄 アトリエ100&1 創業者

アトリエ100&1創業者。横浜生まれ。宝飾業界約40年、宝石店の企画・コンサルティング20年以上。手作り結婚指輪の仕組みをいち早く確立し、2009年に金沢で創業。3,000組以上の指輪選びに立ち会う。信条は「毎日着けて30年もつか」。

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