「プラチナは硬いから傷つかない」「18金よりプラチナのほうが硬い」——結婚指輪を選ぶとき、そう聞いたことがあるかもしれません。結論からお伝えすると、これは正確ではありません。プラチナの硬度は、純度や合金の配合、加工の仕方で大きく変わります。純度の高いプラチナはむしろやわらかめで、「プラチナだからまったく傷がつかない」わけでも「必ず18金より硬い」わけでもないのです。この記事では、手作り結婚指輪の工房である私たちが、ビッカース硬度という一般的な指標をもとに、プラチナの硬さの本当のところと、傷とのつき合い方を誠実に整理します。

そもそも「硬度」とは?結婚指輪で語られる指標
指輪の素材について「硬い・やわらかい」と言うとき、よく使われるのがビッカース硬度(HV)という指標です。試料に小さなダイヤの圧子を押し当て、へこみのできにくさを数値化したもので、数字が大きいほど「傷やへこみに強い」傾向を示します。
ただ、ここで注意したいことがあります。硬度は「素材そのもの」で一律に決まるわけではありません。同じ金属でも、他の金属をどれだけ混ぜるか(合金の配合)、そして加工の過程でどれだけ叩き締めるか(加工硬化)によって、硬さは変わります。
つまり「プラチナ」「ゴールド」という素材名だけでは、硬さは決まらないのです。結婚指輪の硬さを考えるときは、「純度」「合金」「加工」の3つをセットで見る必要があります。次の章で、その中身を具体的に見ていきましょう。
プラチナの硬度の真実|純プラチナはやわらかめ
まず、多くの方が誤解しているポイントからお答えします。「純度の高いプラチナ=いちばん硬い」というのは、正確ではありません。
数字で見るのがいちばん早いので、ビッカース硬度(HV)の目安を表にしました。純度の高い純プラチナ(Pt999に近いもの)は、実はやわらかめの部類に入ります。だからこそ結婚指輪では、純プラチナのままではなく、他の金属を少し混ぜてPt900やPt950といった「合金」にすることが一般的です。
| 表記の例 | プラチナの割合 | ビッカース硬度の目安 | 特徴の傾向 |
|---|---|---|---|
| Pt999(純プラチナ) | 99.9% | HV40〜50 | やわらかめ。単体では変形しやすい傾向 |
| Pt950 | 95% | HV55〜120 | しなやかさと硬さのバランス型 |
| Pt900 | 90% | HV60〜130 | 結婚指輪で広く使われる。実用的な硬さ |
(数値は当店の宝飾用語集と一般的な貴金属の技術資料をもとにした目安です)
同じPt900でも数値に大きな幅があるのは、割金(わりがね=混ぜる金属)の種類と、加工の状態で硬さが変わるためです。金属は焼きなました直後がいちばんやわらかく、指輪をつくる工程で叩いたり締めたりすると、加工硬化によって硬さが増していきます。ですから「Pt900だから硬度はこの数値」と一点で言い切ることはできません。あくまで配合と加工の結果として、硬さが決まるのです。
「純プラチナがやわらかいなら不安」と感じるかもしれませんが、心配はいりません。結婚指輪に使われるプラチナはほとんどが合金で、日常づかいを想定した硬さに調整されています。素材選びで迷ったら、料金と素材のページもあわせてご覧ください。
プラチナは18金より硬い?——一概には言えない理由
「プラチナは18金(K18)より硬い」という話も、正確ではありません。これも配合と加工しだいだからです。
18金は、金75%に銀や銅などを25%混ぜた合金です。純金そのものはHV30前後と、実は純プラチナ以上にやわらかい金属ですが、割金によってK18ではHV120〜150程度まで硬くなります。一方のPt900はHV60〜130程度。ふたつの数値の幅が重なり合っていることからも分かるとおり、硬さの順位は配合と加工しだいで入れ替わります。つまり「プラチナのほうが必ず硬い」とは言えないのです。
大切なのは、硬さは「素材名」ではなく「合金の中身」と「加工」で決まる、という考え方です。プラチナかゴールドかという素材選びは、本来は硬さの優劣ではなく、色味・肌なじみ・経年変化の好みで選ぶものだと私たちは考えています。
- プラチナ:白く落ち着いた輝き。変色しにくく、経年で味わい深いツヤに育つ傾向
- 18金(イエロー・ピンクなど):あたたかみのある色。カラーバリエーションが豊富
- どちらを選んでも:合金と加工で日常づかいに適した硬さに仕上げられる
素材による色や質感の違いは、デザインのページで作例とあわせてご紹介しています。硬さだけで決めず、ふたりの好みで選んでいただくのがいちばんです。
「鍛造なら傷つかない」も誤解|傷とのつき合い方
もうひとつ、よくある誤解が「鍛造(たんぞう)でつくった指輪は傷つかない」というものです。加工の過程で叩き締めることで硬さは増しますが、それでも「まったく傷がつかない」ということはありません。宝飾業界では、加工硬化などで硬度を高めたものをHV200前後を目安に「鍛造」と呼ぶことが増えていますが、日常にはその数値を大きく超える硬さのものがあふれています。たとえば砂埃に混ざる石英はHV1100前後。風の強い日に身に着けているだけでも、指輪には細かな傷がついていくのです(くわしくはビッカース硬度の用語解説をご覧ください)。
ここで知っておいていただきたいのは、傷は「劣化」ではなく「経年変化」だということです。

- 細かな傷は自然なもの:毎日着ける指輪に小さな傷が入るのは、どんな素材でも避けられません。それは二人が過ごした時間の記録でもあります
- マット(つや消し)仕上げという選択:あえて表面をつや消しにすると、細かな傷が目立ちにくくなります。傷が気になりやすい方に選ばれる仕上げです
- 磨き直しで蘇る:多くの傷は、職人による磨き直し(研磨)で目立たなくできる場合があります。長く着けるほど、メンテナンスの存在が心強くなります
ちなみに私たち100&1の手作り結婚指輪は、多くのジュエリーブランドと同じキャスト製法(鋳造)でつくり、鋳造・研磨の仕上げは長年の宝飾業界で培われた知見を持つ職人が担当します。製法の名前ではなく、素材の配合と厚みの設計、そして仕上げの丁寧さが、着け心地と長もちを支えています。
硬さより大切な「厚みと地金量」という視点
工房の中からお伝えしたい一次情報があります。日常づかいで指輪が長もちするかどうかは、硬度の数値だけでは決まりません。むしろ厚みと地金量が、変形やサイズ直しへの強さを大きく左右します。
指輪は薄くつくるほど地金が少なくて済み、価格を抑えて見せられます。しかし薄い指輪は、ぶつけたときの変形やサイズ直しへの耐性が下がりがちです。私たちは、硬度の数値を追いかけるより先に、30年間の毎日に耐える厚みと地金量を確保する——その順番を設計の標準にしています。数字の上でどれほど硬い素材でも、薄ければ変形には勝てないからです。
| 見る視点 | よくある誤解 | 工房の考え方 |
|---|---|---|
| 硬さ | 硬い素材なら安心 | 硬さは配合・加工しだい。過信しない |
| 厚み | 薄いほうが上品 | 厚みは耐久性の土台。確保する |
| 傷 | 傷ゼロが理想 | 磨き直しで付き合う経年変化 |
もうひとつ大切なのがサイズ設計です。指のサイズは朝夕のむくみ、季節、関節の形、職業(手を使う仕事かどうか)で「ちょうどいい」が変わります。採寸の数字だけに頼らず、暮らしまで伺ってサイズを決めることが、日々のストレスの少なさにつながります。
なお参考価格として、100&1の手作り結婚指輪はペア30万円〜が目安です。近年は金・プラチナの相場が上昇しており(プラチナの年間平均小売価格は2020年の3,114円/gから2025年には6,747円/gへ、田中貴金属工業の公表値による)、地金量を確保する設計では相場の影響も受けます。見積もりは制作基本料・地金代・加工費の内訳をすべて開示していますので、素材や幅・厚みの調整もご相談いただけます。用語の意味を確認したいときは、宝飾用語集もご活用ください。
よくある質問
プラチナと18金、傷が気になるならどちらを選ぶべきですか?
「傷のつきにくさ」だけで素材を決めることは、あまりおすすめしていません。硬さは素材名ではなく合金の配合と加工で決まり、プラチナ・18金のどちらも日常づかいに適した硬さに仕上げられるためです。傷が気になる場合は、素材よりも「マット仕上げにする」「厚みを確保する」といった工夫のほうが効果的なことがあります。色味や肌なじみの好みで素材を選び、傷対策は仕上げで考える——この順番をおすすめしています。
純プラチナがやわらかいと聞いて不安です。結婚指輪に向いていますか?
ご安心ください。結婚指輪に使われるプラチナは、多くがPt900やPt950といった合金で、日常づかいを想定した硬さに調整されています。純プラチナ(Pt999に近いもの)そのままで結婚指輪をつくることは一般的ではありません。合金と加工により、毎日着けるのに適した粘り強さと硬さを持たせています。
金属アレルギーが心配です。プラチナなら大丈夫ですか?
一般的にプラチナは比較的アレルギーが起こりにくいとされますが、合金に含まれる他の金属に反応する可能性はゼロではありません。体質には個人差がありますので、心配な方は事前に医師(皮膚科)へご相談いただくことをおすすめします。そのうえで、素材の配合についてはご相談いただければ、できる範囲でお応えします。
プラチナの硬さについての「傷つかない」「18金より硬い」という言葉は、実は正確ではありません。大切なのは、素材名のイメージではなく、合金・加工・厚み・仕上げという中身で選ぶこと。そして、傷とは付き合っていくものだと知っておくことです。どの素材が自分たちに合うか迷ったら、作例を見ながらゆっくり考えていただけます。100&1は金沢・横浜の2拠点とも完全予約制です。素材選びの小さな疑問こそ、まずはLINEでお気軽にご相談ください。
