K18とK10の違いは、たったひとつです。金がどれだけ入っているか。K18は75%、K10は約41.7%。それだけの違いなのですが、そこから硬さ・色味・変色のしやすさ・重さ・地金代が連鎖して変わっていきます。そして結婚指輪は、買って終わりではなく、そこから10年、20年と着け続けるもの。だからこの記事では、カタログを見比べる時点の話ではなく、10年後にどこに差が出て、どこには出ないのかという時間軸でK18とK10を並べます。手作り結婚指輪の工房として、勧めすぎず貶めすぎずに整理してみます。

違いは「金がどれだけ入っているか」の一点です
金の純度は24分率で表します。純金を24として、そのうち何割が金なのか、という数え方です。
| K18 | K10 | |
|---|---|---|
| 24分率 | 18/24 | 10/24 |
| 金の含有率 | 75% | 約41.7% |
| 割金(金以外)の比率 | 25% | 約58.3% |
| 造幣局の品位区分 | 750 | 416 |

押さえておきたいのは、K10も日本の公的な品位区分に入った正式な金製品だということです。造幣局が第三者として品位を試験し証明記号(ホールマーク)を打つ対象として、金は999・916・750・585・416・375の6区分が定められています(出典:造幣局「貴金属製品の品位区分と証明記号」)。K10はその416。まがいものではありません。
そのうえで、この記事の主題はここからです。割金(わりがね)とは、金に混ぜる銀・銅・パラジウムなどの金属のこと。K18では全体の25%、K10では約58.3%を占めます。K10は、指輪の半分以上が金以外でできているわけです。金という金属はきわめて安定していて、変色も腐食もほとんど起こしません。逆に言えば、指輪に起こる経年変化のほとんどは、金ではなく割金の側で起きています。割金が2倍以上入っているという一点が、10年という時間のなかでいくつもの形になって表れてくる、ということです。
割金が増えると、硬さ・色・重さがこう変わります
連鎖の中身を、ひとつずつ見ていきます。
硬さは、K10のほうが出やすい傾向があります
金は純度が高いほどやわらかい金属です。ビッカース硬度で見ると、純金はHV30前後。割金を加えたK18ではHV120〜150ほどまで上がります。K10はさらに割金が多いぶん、硬さが出やすい側です。
ただし「K10だから何HV」と決まっているわけではありません。硬さは割金の配合と加工の仕方で決まるからです。そしてもっと大事な前提として、硬い=傷がつかない、ではありません。日常的に触れる砂埃の主成分である石英はHV1100前後。指輪の貴金属は硬いと言われるものでもHV200前後が目安ですから、桁がひとつ違います。硬さと傷の関係そのものは鍛造なら傷つかないは本当かで扱っています。
色味は、K10のほうが淡くなります
金の量が少ないぶん、K10は金色の主張がおだやかになります。イエローゴールドで比べると、K18がはっきりした黄金色なのに対し、K10はやや淡いクリームがかった黄色。ピンクゴールドやホワイトゴールドでも同じ理屈で、K10のほうが色の出方が控えめになります。
これは優劣ではなく、好みの領域です。「派手すぎない金色がいい」という方にとっては、K10の淡さがむしろ長所になります。ただしカタログの写真では、この差はほとんど伝わりません。色の判断だけは、画面ではなく光の下でしてください。イエロー・ピンク・ホワイトという色そのものの選び分けはゴールド3色の比較へどうぞ。
重さ(比重)も変わります
見落とされがちですが、K18とK10では比重が違います。比重とは、同じ体積あたりどれくらい重いかという数値です。純金の比重は約19.3。ここに軽い割金が混ざるほど、数字は下がります。
- K18:おおむね14.8〜16.1程度
- K10:おおむね11.4〜13.1程度
※いずれも色(割金の配合)によって幅があり、資料によっても数値がやや異なります。あくまで目安としてご覧ください。
つまり、まったく同じ形・同じ大きさでつくっても、K10のほうが軽く仕上がります。この差は、指にのせるとわかる程度にはあります。「ずっしり感が好き」ならK18、「軽いほうが着けていて楽」ならK10、という選び方も成り立ちます。そしてこの比重の差は、次にお話しする値段にも効いてきます。

地金代の差は、なぜ「単純に半分」にならないのか
ここが、いちばん誤解の多いところです。
「金の量が半分強なら、値段も半分くらいになるのでは」。そう考えたくなりますが、そうはなりません。理由は2つあります。
理由1:素材で動くのは、見積りの一部だけ
100&1の見積りは制作基本料・地金代・加工費の3層構造で、すべての項目を単価×数量でお見せしています。素材をK18からK10に変えたときに下がるのは、このうち地金代の層だけ。ワックス原型をふたりで削り、職人が鋳造・研磨して仕上げる手間は、素材が変わっても変わりません。ですから総額の下がり方は、地金代の下がり方よりずっとゆるやかです。見積書のどの行が何で決まっているかは手作り結婚指輪の値段の内訳に一行ずつ書きました。
理由2:地金代そのものの計算に、比重が入ってくる
地金代は、ざっくり言えば「相場 × 使う地金の重さ × 金の含有率」で決まります。含有率だけを見れば、K10はK18の約56%(41.7÷75)。ところが、ここに比重が絡んできます。同じ形ならK10のほうが地金そのものが軽いので、「重さ」の項も一緒に動くのです。しかも比重は色(割金の配合)によって幅があり、幅の取り方しだいで結果は変わります。ですから「含有率が半分強だから地金代も半分強」という引き算は成り立ちませんし、私たちのほうから「何割下がります」と申し上げることもできません。動く行がどれで、いくら動くのかは、実際の見積りで確かめていただくのが確実です。
そしてもうひとつ、素材と値段を考えるうえで外せない前提があります。「プラチナは高いからゴールドにすれば安くなる」は、今の相場では成り立ちません。
田中貴金属工業の年間平均(参考小売価格・税抜)で見ると、2025年は金が17,302円/g、プラチナが6,747円/g。金はプラチナの約2.56倍です。純度と比重を勘案しても、同じ形ならK18の地金代はPt900の約1.6倍になります。プラチナとK18の性格そのものの比較はプラチナと18金へどうぞ。
結局のところ、単価・比重・純度の3つが逆方向に働くので、最後は実際の見積り金額で比べるしかありません。K18とK10で、どの行がいくら動くのか。その場で数字を並べてご覧いただくのが、いちばん確かです。100&1の参考価格はペア30万円〜が目安で、素材まで含めた考え方は料金と素材にまとめています。
なお、K10が安い理由そのものと「安っぽいのでは」という不安は10金の結婚指輪は安っぽい?で別に扱っています。価格の話はここまでにします。
金額の目安だけ先に知りたい、という方へ。
見積りシミュレーターなら、地金代と加工費を分けた概算をその場で出せます。来店の前に、数字だけ確かめておくこともできます。相談だけでも大丈夫です。
10年つけたとき、どこに差が出て、どこには出ないのか
さて、本題です。10年という時間で見たとき、K18とK10の差は「出るところ」と「出ないところ」にきれいに分かれます。
| K18とK10で差が出るか | |
|---|---|
| 表面の色の変化・くすみ | 出ます(K10のほうが出やすい側) |
| 手元での見た目のボリューム | ほとんど出ません(幅・厚みで決まります) |
| 細かな擦り傷の入り方 | ほとんど出ません(どちらも入ります) |
| 変形・歪み | ほとんど出ません(幅・厚みと使い方で決まります) |
| 刻印の残り方 | ほとんど出ません |
| 地金としての価値 | 出ます(金の量なりになります) |
差が出るのは、表面の色の変化です。 金そのものは安定していますが、割金に含まれる銀や銅は、汗や皮脂の影響で表面が変化することがあります。割金の比率が高いK10は、その影響を受けやすい側。ただし「必ず変色する」わけでも「戻らない」わけでもありません。K10という素材で何が起きているのかは10金の変色とケアに、変色とくすみをどう見分けて日常どう手入れするかは結婚指輪の変色・くすみとお手入れにまとめました。
もうひとつ差が出るのが、地金としての価値です。 将来手放すとき、金製品の買取額は基本的に「相場 × 重さ × 含有率」で計算されます。同じ重さなら、K10に入っている金はK18の約56%。ここは正直に認めるべきところです。ただ私たちは、結婚指輪を「資産」として選ぶことをおすすめしていません。売る前提の指輪と、30年着け続ける前提の指輪では、そもそも設計が変わってしまうからです。
そして、差が出ないところのほうが実は多い。 10年後に手元がどう見えるかを決めているのは、含有率よりも幅・厚み・仕上げです。細く薄い指輪は、K18でも10年で頼りなくなりますし、変形やサイズ直しへの耐性も落ちます。ここは素材の話ではありません。

磨き直しで戻る部分と、戻らない部分
10年後の話をするなら、メンテナンスの現実にも触れておかなければ不誠実です。
戻るもの
- 表面の細かな擦り傷
- くすみ、表面の色の変化
- 皮脂汚れによる曇り
これらは磨き直し(再研磨)で、かなりの部分が戻ります。K10の変色も多くは表面で起きていることなので、磨けば地金の色が出てきます。
戻らないもの
- 研磨で削れた地金そのもの
- 深い変形や欠け
- 何度も繰り返した研磨による、わずかな痩せ
大事なのは1つ目です。磨き直しとは、表面をごく薄く削って平らにする作業です。傷を埋めているのではなく、傷が消えるところまで周りを削っています。一回一回はごくわずかでも、回数を重ねれば地金は少しずつ痩せていきます。
ここで効いてくるのが、また幅と厚みです。最初にきちんと厚みのある指輪をつくっておけば、磨き直しという手段を将来何度も使える。薄くつくった指輪は、その余白が最初から少ない。だから100&1では、幅・厚み・重量を見積りに明記します。数字を小さく見せるために指輪を削る、ということをしないためです。
なお、ホワイトゴールドを選んだ場合は少し話が変わります。表面のロジウムメッキは磨き直しではなく掛け直し(再メッキ)で戻す、別の性格のメンテナンスになります。こちらもゴールド3色の比較に書きました。
どっちを選ぶか。優劣ではなく、優先順位で決める
ここまでを踏まえて、判断軸だけ並べます。どちらが上ということはありません。何を優先するかの話です。
| 優先したいこと | 考え方 |
|---|---|
| 色の変化をできるだけ気にせず着けたい | K18が向いています |
| 将来の資産性・買取額を重く見たい | K18が向いています |
| はっきりした金色が好き | K18が向いています |
| 幅と厚みは譲りたくない。そのうえで地金代を抑えたい | K10は合理的な選択肢です |
| 淡くやわらかい金色が好き | K10も候補に入ります |
| 軽い着け心地のほうが好き | K10も候補に入ります |
| 拭く・磨くという手入れが苦にならない | K10のハードルは下がります |
ひとつだけ、私たちからお伝えしたいことがあります。「10年後に差が出る」といっても、その差の多くは手入れと磨き直しで管理できる範囲にあります。 一方で、幅と厚みを削ってしまった指輪の頼りなさは、あとから足すことができません。素材で悩む時間の何割かを、幅と厚みの検討に回していただけたら——というのが、実務のなかでたどり着いた実感です。
100&1は原型(ワックス)から削るキャスト製法なので、形は同じまま素材だけを変えられます。「この形でK18ならいくら、K10ならいくら」を並べてご覧いただけます。工房は金沢・横浜の2拠点、どちらも完全予約制です。
よくある質問
K18とK10、見た目で見分けはつきますか?
並べて比べれば、K10のほうが色が淡いことはわかります。ただし単体で見て「これはK10だ」と言い当てるのは、私たちでも難しいところです。刻印を読まないかぎり素材はわかりませんし、手元での印象を決めているのは含有率よりも幅・厚み・仕上げです。
K10にすると、値段はK18の半分くらいになりますか?
なりません。素材で下がるのは見積りのうち地金代の層だけで、制作基本料と加工費は変わらないためです。地金代の中でも、含有率だけでなく比重も同時に効くので、単純な割り算にはなりません。単価・比重・純度の3つが逆方向に働くため、最後は実際の見積り金額で比べていただくのが確実です。
10年後、K10は変色して元に戻らなくなりますか?
多くの場合、表面で起きている変化なので、磨き直しで地金の色が戻ります。「戻らなくなる」ことより気にしていただきたいのは、磨き直しが地金をごく薄く削る作業だという点です。だからこそ、最初に厚みを確保しておくことが将来の余白になります。
K10のほうが硬いから、傷がつかないと聞きました。
「硬さが出やすい傾向」までは言えますが、「傷がつかない」は成立しません。純金はHV30前後、K18でHV120〜150ほどですが、日常の砂埃に含まれる石英はHV1100前後あります。桁が違うので、どんな素材でも細かな擦り傷は少しずつ入っていくとお考えください。
ふたりで素材を変えても大丈夫ですか?
できます。100&1は原型から削るつくり方なので、同じ原型で素材だけ変えることが可能です。形・幅・刻印のどれかを揃えておけば、素材が違っても対に見えます。
K18とK10のどちらを選んでも、10年後に「間違えた」と思う指輪にはなりません。ただ、金の量が半分強か、半分弱かという事実と、そこから来る性格を知ったうえで選んでいただきたい——それだけです。カタログの数字だけでは決めきれないところは、実物を手にのせて、重さと色を比べるのが早いと思います。「K18とK10で迷っています」という段階のご相談こそ、歓迎です。まずはLINEで、お気軽にお声がけください。

