金価格の高騰で結婚指輪はどうなる?相場と選び方の話

手作り指輪の作り方を説明する宝飾歴30年超の店主

「金がまた上がったらしい」「結婚指輪、今買って大丈夫かな」。ニュースを見てそう思われた方に、結論からお伝えします。金の価格は、この5年でおよそ2.8倍になりました(田中貴金属工業の年間平均・参考小売価格/税抜)。これは実際に、結婚指輪の値段に効いています。ただし私たちは「だから今が買い時です」とは言いません。相場の先行きは誰にも分からないからです。この記事では、金沢と横浜で手作り結婚指輪の工房を営む100&1が、相場がどう動いたかそれが指輪の値段にどう効くのかという仕組みだけを、数字の出どころつきで整理します。なお相場は日々動くため、本文の数値は年ごとの平均値です(本記事の確認日は2026年7月31日)。

工房のテーブルで結婚指輪の見積りと地金相場について説明を受けているところ
目次

まず、金とプラチナは5年でどれだけ上がったのか

体感の話をする前に、公表されている数字を見ます。田中貴金属工業が公開している年次推移(参考小売価格・税抜/1グラムあたりの円)の年間平均値は、次のとおりです。

金(円/g)プラチナ(円/g)
2020年6,1223,114
2021年6,4023,927
2022年7,6494,132
2023年8,8344,437
2024年11,7184,745
2025年17,3026,747

出典:田中貴金属工業「金価格年次推移」「プラチナ価格年次推移」。同社の注記により、消費税率が異なる時期を含むため税抜の参考小売価格が使われています。

読み取れることは、三つあります。

ひとつ目。金は2020年の6,122円から2025年の17,302円へ、約2.8倍になりました。しかも一本調子ではありません。2020年から2021年はほぼ横ばい。動きが大きくなったのは2023年以降で、2024年から2025年の1年だけで約1.5倍です。ここ2〜3年で「急に高くなった」という感覚は、気のせいではありません。

ふたつ目。プラチナも上がっていますが、上がり方は金ほどではありません。2020年の3,114円から2025年の6,747円で、約2.2倍。金の2.8倍と比べると、伸び幅は小さめです。

三つ目。金とプラチナの単価差が開きました。2020年の年間平均は金がプラチナの約2.0倍でしたが、2025年には約2.6倍になっています。この差は、あとで素材選びの話をするときに効いてきます。

なぜ上がったのか。田中貴金属の同じ表には、海外のドル建て価格と為替の平均も併記されています。金のドル建て年間平均は2020年が1トロイオンス1,769.59ドル、2025年が3,431.54ドルで約1.9倍。同じ期間の為替(T.T.S.平均)は107.77円から150.62円で約1.4倍。つまり、海外での値上がりと円安が、掛け算で効いたという構図です。どちらか一方ではありません。

なぜ相場が、指輪の値段に効くのか

制作の基本料・1本目・2本目の3層に分けた見積りの内訳を示した積み上げ図
見積りは制作の基本料・1本目・2本目の3層に分かれます(10金・ストレートの実例)。

ここからが本題です。相場が動くと、なぜ指輪の値段が動くのか。仕組みを分解します。

手作りの結婚指輪の見積りは、100&1では制作基本料・地金代・加工費の3つの層に分かれています。このうち相場に連動して動くのは、地金代だけです。制作基本料も加工費も、金の価格で毎日変わるわけではありません。だから相場の話は、まるごと「地金代」の話だと考えていただいて構いません。3層それぞれの中身は手作り結婚指輪の値段にまとめています。

では、その地金代は何で決まるのか。「1グラムあたりの単価」×「使うグラム数」です。単純ですが、この掛け算がすべてです。

単価は相場が決めます。私たちには動かせません。動かせるのは、グラム数のほうです。そしてグラム数は、指輪の形で決まります。

ノギスで結婚指輪の幅と厚みを測っているところ

指輪は、ざっくり言えば「帯を輪にしたもの」です。使う金属の量は、幅 × 厚み × 指まわりの長さでおおよそ決まります。幅を広くしても、厚みを増やしても、地金の量は増える。幅5mmの指輪は、幅2.5mmの指輪の約2倍の地金を使います。金が2.8倍になった今、この差はそのまま金額の差になって出てきます。

「同じデザインなのに、彼のほうが高い」ということが起きるのも、意地悪でも計算違いでもなく、指まわりの長さが違うからです。つまり相場高騰の影響は、幅広で厚みのある指輪ほど大きく出ます。細身のシンプルな指輪と、太くて存在感のある指輪では、値上がりの効き方がまったく違うのです。

プラチナと金では、効き方が違います

素材によっても効き方は変わります。理由は純度です。

  • Pt950は950/1000、つまり95%がプラチナ
  • Pt900は900/1000で90%
  • K18は18/24、つまり75%が金
  • K10は10/24で、およそ41.7%が金

残りは割金(わりがね/混ぜる他の金属)です。相場が効くのは、この純度の分だけ。K10がK18より地金代を抑えられるのは、含まれる金の量がK18のおよそ半分強だからです。相場が2.8倍になったとき、その2.8倍がかかる対象そのものが小さい、ということです。

ここで、素直な事実をひとつ書いておきます。「プラチナは高いから、ゴールドにすれば安くなる」という言い方は、今の相場では必ずしも成り立ちません。2025年の年間平均で、1グラムあたりの単価は金が17,302円、プラチナが6,747円。金のほうが2.5倍以上高いのです。

ただし、これだけで「ゴールドのほうが高い」と結論するのも早すぎます。プラチナは金より比重が大きく、同じ形の指輪をつくると重くなります。単価が安くても、使うグラム数は増える。さらに純度も違う(Pt900は90%、K18は75%)。単価・比重・純度の三つが逆方向に働くので、最後は実際の見積り金額で比べるしかありません。

私たちが申し上げたいのは、ひとつだけです。「プラチナ=高い」「ゴールド=安い」という昔ながらの感覚を、そのまま今の相場に当てはめないでください。素材ごとの性格そのものの違い(変色、硬さ、色の見え方)はプラチナと18金の比較に、K10という選択肢の是非はK10の結婚指輪に書いています。

イエローゴールドの手作り結婚指輪

正直に書きます。以前は10万円台でした

ここは、隠さずに書いておきたいところです。

かつて100&1では、ペア10万円台でご案内できていた時期がありました。それが今は、ペア30万円〜が目安です。

理由は、これまで書いてきたとおりです。地金の単価が上がったから。制作基本料や加工費を上げたのではなく、相場に連動する層が動いた結果です。

「昔は安かったのに」と思われるのは当然だと思います。私たちも、その値上げを歓迎しているわけではありません。ただ、値段を据え置くために指輪を細く・薄くするという選択は取っていません。地金の量を減らせば金額は下がります。でもそれは、指輪そのものを変えるということです。だから100&1は、幅・厚み・重量を見積りに明記して、何にいくらかかっているかを開いたうえで、金額のほうを正直に出すというやり方を選んでいます。考え方は料金と素材のしくみにまとめました。

なお、ペア30万円〜という水準そのものは、世の中の相場から飛び抜けているわけではありません。世間一般の平均額については結婚指輪の相場で調査データを整理しています。

金額の目安だけ先に知りたい、という方へ。
見積りシミュレーターなら、地金代と加工費を分けた概算をその場で出せます。来店の前に、数字だけ確かめておくこともできます。相談だけでも大丈夫です。

「今買うべきか、待つべきか」に答えます

いちばん知りたいのは、ここだと思います。

先に立場を書きます。私たちは相場の先行きを予測しません。「これからも上がるので今が買い時です」とも、「そのうち落ち着くので待ちましょう」とも言いません。言えないからです。ここ5年の推移を見ても、2020年から2021年はほぼ横ばい、2024年から2025年は約1.5倍。同じ5年のなかで動き方はまるで違いました。過去がこうだったから未来もこうなる、とは言えません。指輪を投資商品のようにお勧めするつもりもありません。

そのうえで、実際的なお答えをします。相場を待つより、必要な時期から逆算するほうが、後悔が少ないと思います。

  1. 待っている間に相場が下がる保証がない。分からないものを待つのは、判断ではなく先送りです。
  2. 結婚指輪には締切がある。挙式、入籍、前撮り。指輪が手元にあってほしい日は、相場とは無関係に決まっています。
  3. 手作りは、削ってから仕上がるまでに時間がかかる。ワックス(ろう)の原型を削っていただいたあと、職人が鋳造・研磨をします。「相場が下がったら動こう」と構えていると、この時間を計算に入れそこねます。

ですので、順番はこうです。まず「いつまでに必要か」を決める。そのうえで、その時期の相場で払える形を選ぶ。逆算の組み立て方は結婚指輪はいつ買うかに詳しく書いています。

高騰局面で、現実的にできること

では、相場が高い今、何ができるのか。手はあります。ただしやっていいことやらないほうがいいことがあります。

やっていいこと・その1。素材を選び直す。K18からK10へ、あるいは素材そのものを見直す。含まれる貴金属の量が変われば、地金代は変わります。これはデザインを痩せさせずに金額を動かせる、数少ない方法です。ただし前述のとおり、単価・比重・純度が絡むので、「こちらのほうが安いはず」と当たりをつけず、実際の見積り金額を並べて比べてください。

やっていいこと・その2。幅を、好みの範囲で選び直す。幅は地金量に直接効きます。もともと細身が好きな方なら、幅を選ぶことは我慢ではなく好みの表明です。ただし、金額のために好きでもない細さを選ぶのは違います。細い指輪を選んだ方が何に困りやすいかは細い指輪の後悔に書きました。

やらないほうがいいこと。厚みを削って金額を合わせる。これははっきり書きます。厚みは、指輪の耐久性そのものです。薄くすれば地金代は下がりますが、変形やゆがみのリスクは上がります。毎日、何十年と着けるものの土台を、相場の都合で削るのは順番が逆だと私たちは考えています。厚みが何を担っているかは結婚指輪の厚みに、どこを削ってよくてどこを削ってはいけないかという判断の実務は削っていい所といけない所にまとめています。

そしてもうひとつ。見積りの中身を見てください。相場高騰の局面でいちばん困るのは、値段が上がったこと自体より、何が上がったのか分からないことです。地金代が単価×グラム数で書かれていれば、相場が動いたときにどこが動くのかが自分で読めます。見積書のどこを見ればいいかは見積書のチェックリストにまとめました。

完成した手作り結婚指輪をふたりで着けているところ

よくある質問

金の価格は、この数年でどれくらい上がったのですか?

田中貴金属工業が公開している年間平均(参考小売価格・税抜)で、2020年が1グラム6,122円、2025年が17,302円でした。5年でおよそ2.8倍です。とくに2024年(11,718円)から2025年(17,302円)の1年で約1.5倍と、直近の動きが大きくなっています。相場は日々変動しますので、最新の価格は田中貴金属工業など公式の発表でご確認ください。

金が高騰しているなら、結婚指輪は今買ったほうがいいですか?

私たちは相場の先行きを予測しないため、「今が買い時」とは申し上げません。上がるとも下がるとも言えないからです。おすすめしているのは、挙式・入籍・前撮りなど「指輪が手元にあってほしい日」から逆算して時期を決める考え方です。相場を待つより確実です。

プラチナのほうが金より高いのではないですか?

1グラムあたりの単価で見ると、2025年の年間平均は金が17,302円、プラチナが6,747円で、金のほうが2.5倍以上高くなっています(田中貴金属工業)。ただしプラチナは比重が大きく同じ形でも重くなること、純度の規格が違うこと(Pt900は90%、K18は75%)があるため、最終的な地金代は実際の見積りで比べる必要があります。

指輪の値段のうち、相場で変わるのはどの部分ですか?

100&1の見積りは制作基本料・地金代・加工費の3層に分かれていますが、相場に連動するのは地金代だけです。地金代は「1グラムあたりの単価 × 使うグラム数」で決まり、グラム数は幅・厚み・指のサイズで変わります。ですので、幅広で厚みのある指輪ほど相場の影響を大きく受けます。

金額を抑えるために、指輪を薄くしてもらうことはできますか?

地金の量が減るので金額は下がりますが、私たちからはおすすめしていません。厚みは指輪の耐久性を支える部分で、薄くすると変形のリスクが上がるためです。金額を調整したい場合は、まず素材や幅の見直しからご相談ください。何を削ってよく、何を削るべきでないかは個別にご説明します。

金の相場は、私たちにも動かせません。動かせないものを前にしてできるのは、何にいくらかかっているかを開いて、削ってはいけないところを守ることだけだと思っています。値上がりを隠して指輪を細くするより、正直に金額をお見せして一緒に考えたい。そういう工房です。

※本文の相場データは田中貴金属工業が公開する年次推移(参考小売価格・税抜)にもとづく年間平均値で、2026年7月31日時点の確認によります。地金相場は日々変動しますので、最新の価格は公式の発表をご確認ください。実際のお見積りは、ご相談時点の相場で算出いたします。

金額のこと、素材のこと、時期のこと。どこからでも構いませんので、まずはお気軽にLINEでご相談ください。

実際のお見積り例

K10(10金)ペアで約31.7万円——実際にお作りしたお客様のお見積りです。100&1では、制作基本料・地金代・加工費の3層すべてを単価×数量までお見積り書に記載しています。

価格は素材・幅・厚み・地金相場で変わります。おふたりの条件での概算は見積りシミュレーターでご覧いただけます。

この記事を書いた人

三代 二栄のアバター 三代 二栄 アトリエ100&1 創業者

アトリエ100&1創業者。横浜生まれ。宝飾業界約40年、宝石店の企画・コンサルティング20年以上。手作り結婚指輪の仕組みをいち早く確立し、2009年に金沢で創業。3,000組以上の指輪選びに立ち会う。信条は「毎日着けて30年もつか」。

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