鍛造は傷付かない? 実は日常生活でも傷付く鍛造指輪の不思議

テレビなどで鍛造の指輪が取り上げられた事がキッカケで鍛造の指輪の事を良く耳にする機会が増えましたね。私共にくる相談件数などでも伺えます。

いま、結婚指輪選びをしてるあなたが、鍛造の事をよく知らなかったり、勘違いしていたらと思うと、同じ業界の末席にいる私も、少し心苦しいので超簡単に説明してみますね。

6~7分ほど時間を取らせますが、必ず「そうなのか!」と感じ、参考になる事が思いますよ。

鍛造が鋳造よりも堅いとの理由で、結婚指輪や婚約指輪を選ぶときの選択肢の一つと考える方が増えてるのは事実です。

ラブラブな新婚生活をいつまでも長く続けたい気持ちは分かるし、結婚指輪もいつまでも新しいままで着けたいですよね。

鍛造は鋳造よりも硬い =鋳造より傷が付き辛い 正しいです。

鍛造は硬い=鍛造は傷付かない 間違いです。

傷が付かないと云ってる所があれば、それは間違いです。その様な販売教育をしてるところはお勧めできませんのでご注意くださいね。

今から述べる事は、主に結婚指輪としての鍛造と鋳造の違いについてです。

あなたがもし間違った解釈をしていた場合は、このブログを最後まで読んで、鍛造の知識を増やし、正しい理解をして下さいね。

笑顔の赤ちゃん

そもそも、これらの結婚指輪についての事は、単に宝飾業界で使われる地金鍛造と鋳造との工法を比べての事ですので、それらを単に比べるのではなく、何処で使われるかも知りながら、論じなくてはいけないと思うのです。

いわゆる、日常生活においての鍛造と鋳造の2つの違いを知らないといけないと思うのです。

それと、お客様からの質問でやり取りしてる中で気になったのが、どうも鍛造を販売する時に、鋳造の弱点らしき事を消費者に伝えてる?みたいなので、両方扱う私共としてもフェアな説明でないと思うので解説することにしました。

私共はあくまでお客様、消費者の事を一番に考えたいと思います。

鋳造の弱点?

もう一度言いますね。

あくまでも結婚指輪という同じ用途のモノでの説明です。

鍛造を売りにしてるお店では傷付き辛いと表現してると思いますが、さらに作り方の比較対象として鋳造の事も話しています。

弱点として話してはいないとは思うのですが、消費者の頭の中では、その様に聞こえ優劣の天秤が働いてる様に思うのです。

たとえば、鋳造の時に金属に気泡が入る事で、地金が脆くなりますとか・・・

鍛造は刀を鍛冶屋が叩き鍛える姿等を例にしたり・・・鋳造は鋳物などの金属を流し込む工法の違いを説明します。

そうする事で、消費者はだんだん鍛造は強く傷付かない、鋳造は脆く傷つくと脳にインプットされてしまうと思うのです。

もしあなたが、これらの事実を知らなかったとして、誤解したまま鍛造の結婚指輪を見に行ったらと考えるととても恐ろしいのです。

そんな考えで求める人も多いみたいですが、これもTVや情報誌での影響だと思います。

マスコミや情報誌などは、鵜呑みにすると危険ですよ。

特に初めての結婚に関して、WEBでの情報や結婚情報誌などは、情報が得やすい部分、業界の思惑がたくさん散りばめられてると考えた方が良いです。

結婚情報誌等の広告料が1ページ100万円する事を消費者も知るべきだと思います。

WEB等で情報発信をしている大手などに掲載をするにもそれなりの広告の費用が掛かるのです。

硬さを計るHV(ビッカース硬度)

宝飾業界に長い私が解釈する、昔からの云われる鍛造は、刀鍛冶のように金属を赤くなるまで焼いて、柔らかくなったその地金を叩きながら形を成型していく作り方です。

金属が徐々に冷めながら叩く事で、金属の分子の密度が高まり硬く強くなります。

宝飾業界の現在でもごく一部の職人がこの様な作りをしていると思います。少なくても20年前には私の知る限りではいましたが、現在では滅多にお目にかかれないのは、そうして作る職人が余りに少ないからなのです。

それでも市場で鍛造がもてはやされるのは、鍛造を売りたいメーカーの販売戦略と、テレビやNET等の情報発信側の部分的にしか見せない事により、消費者が間違った解釈をしてるからだと思います。

宝飾業界でも、いつの間にか、金属の硬さを計る単位で、HVビッカース硬度200あると鍛造と謳っています。

ビッカース硬度(単位HV)とは、金属の硬さ(あるポイントで金属の表面を押した時の硬さ)を表す表記でして、硬さにも伸びや捻りなど様々存在するのです。

ビッカース硬度ウィキペディア

そもそも結婚指輪を素材ごとのビッカース硬度HVの違いや、鍛造や鋳造で作った時のビッカース硬度HVの差がどれ位の硬さなのかを知る人はあまりいません。

宝飾業界もビッカース硬度HV200を超えるモノを作り方問わず鍛造と呼んでる所もあるみたいですので、ビッカース硬度200が日常生活の中でどれ位の硬度なのかを知るべきだと思うのです。

驚く子供

ステンレスのシンクに触れたり、食器に触れても鍛造のビッカース硬度HV200の結婚指輪でも傷は付きます。

えっ!?と思うかもしれませんが、事実なのです。

なので同じ結婚指輪を工法の違いで鍛造と鋳造を比べる事がそもそも間違いだと思うのです。

一般的にジュエリーで使う金を例に挙げてみましょう。

24金 HV30位 金箔になる位柔らかいので宝飾品として使うには合金(他の地金をたし硬くします)として硬くして使います。

18金 HV120~160位 混ぜる金属により変わり、イエローやピンクホワイト等の色の違いも出ます。

純プラチナ HV50前後

プラチナ900 HV約70~100位

ハードプラチナ HV約90~120位

宝飾業界における鍛造のビッカースHV基準  ビッカース硬度HV200以上

これら一般的な素材で鋳造したモノと比べれば、鍛造をHV200とするならば間違いなく硬い事は数値からも解りますが、日常にはHV200より硬いモノは存在するので、必ず傷は付くのです。

この事を説明しない販売店が多い事が問題を大きくしていると思うのです。

例えば、ステンレスのシンクや、風呂場のタイルや湯飲みやコップなどの陶磁器類などHVは鍛造のHV200より遥かに硬いのです。

昔、私はハードプラチナで作ってるから、傷付かないと豪語していた人がいて、思い出したので少しだけ補足しますね。

プラチナは柔らかく、ハードプラチナは硬いと云われ、その数字だけを見れば確かに倍近くのハードプラチナの硬度は高いですが、HV120位であれば、日常生活では必ず傷は付いてくるのです。

一カ月とか半年とか、1年とか短い期間を比べれば、倍の硬度の違いがあれば、その傷の差は明らかになるでしょう。

それでも当たり前に日常生活の中で傷は付くので、長い結婚生活にいつまでも傷付かない事は残念ながらあり得ないのです。

何十年も身に付ける事を前提にする結婚指輪なら、いつまでも綺麗に傷の無い状態で身に着けたい欲求が出てくるのも分かります。しかし若干の鋳造製品のコストにより高くなるのは許せますが、モノによっては倍以上の価格の差を付けてる所もあるので、業界人としては納得のいかない部分でもあるのです。

鍛造にしてもハードプラチナにしても言葉が独り歩きして、消費者を混乱させています。

一般的に使う宝飾業界のプラチナと比べれば、倍近い硬度の違いはありますが、それを知識を知らなかったとして「一般的なプラチナ900と比べて倍も硬いのですよ!」あなたが聞いたらどう感じます?

もちろんこのブログを読んだあなたなら言葉に惑わされる事なく判断して頂きたいです。

刀鍛冶

現在の鍛造

純粋な刀鍛冶の様に作る鍛造は市場商品の1~3%以下ではないのか?と考えます。

私のように宝飾業界に長く従事してる人達に言わせると、現在の鍛造は工業製品に近いモノであり、業界で使っていた鍛造では無いと解釈する人も多いです。

車のアルミホイール等を作るのに、溶けたアルミニウムを鋳造の段階で圧力を掛け、強度を持たせる溶湯鍛造(ようとうたんぞう)と云う鋳造技法を用いた宝飾品もあり、それこそ鋳造なのに鍛造の言葉を抜き出して「鍛造」と謳ってる大手宝飾メーカーもあるのです。

プレスで指輪を成型する事で、金属を締め硬くする方法でも鍛造と謳ってるメーカーもあります。

技術の進歩もあるのでしょう、様々な製造方法が宝飾業界に入って来ている事も事実です。

販売時の説明で、お客様が納得すれば良いのですが、傷が付かないと解釈してる人もいる時点で、販売者側のオーバートークがどうしても頭から拭えないので、あなたに少しでも鍛造と鋳造違いを知って頂き、間違った解釈のまま結婚指輪を選んでほしくないのです。

熱硬化処理

それでも一般的な鋳造より少しでも硬くしたいとの要望は、現在では解決できています。

アトリエ100&1並びに東京浅草橋のアトリエ花風里では熱硬化処理技術により、鋳造でもその硬度をHV200以上にする事が可能なのです。

プラチナは特に硬度が高くなり、処理の仕方や素材によってはビッカース硬度HV400を超えるので、確実に鍛造の指輪より硬く強いと言えるのです。

ただし全ての素材がVH200を超える訳ではありませんので、詳しくはお問合せ下さい。

業界でもこの数年の技術(研究は10数年超)なので、まだまだ浸透していないと思いますが、これからは硬度に対してはこれらも主張してくると思われます。

鍛造は硬く傷つかないと解釈する消費者が多いのも、情報を発信する側の説明不足が大半だと考えますし、それを正しいと信じてしまう消費者の勉強不足がもたらす事象なのでしょう。

これを読んでるあなたは違いますよ。

HV硬度200の鍛造でも傷は付きますし、扱いによっては変形もします。

先ずは素材を見直し、厚みや幅などを見直し、長く使ってメンテナンスをする方が良いと思いますよ。

これから20年30年続く結婚生活にひっそり寄り添う結婚指輪がいつまでも綺麗でいたい気持ちはわかります。それよりもなぜ結婚指輪を交換するのか?  何故2人で手作りするのか?を改めて考えて頂きたいと思います。

2人にとって結婚指輪ってなんですか?結婚指輪を選ぶうえで一番大切にする事はなんですか?

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