ロストワックス製法で指輪ができるまで〜ワックス原型から完成までの全工程

集中してワックス原型を削り進める手作り指輪の制作風景

ワックス(ろう)を削るところまでは、写真を見れば想像がつきます。けれど、その削ったろうのかたまりが、どうやってプラチナやゴールドの指輪に変わるのか。ここが空白のまま申し込むのは、少し落ち着かないと思います。

先に、順番だけをお伝えします。削る → 測る → 湯口(ゆぐち)をつける → 埋没材で固める → 焼いてワックスを溶かし出す → 溶けた金属を流し込む → 型を壊して取り出す → 湯口を切り離す → 磨いて仕上げる。この流れが「ロストワックス製法」です。名前の由来は、途中でワックスが焼き飛ばされて消えてしまうこと。英語の lost wax(失われた蝋)、フランス語の cire perdue(シール・ペルデュ)も同じ意味です。

そして、この記事でいちばんお伝えしたいこと。ふたりの手が動くのは、最初の「削る・測る」までです。そこから先は職人が引き取ります。以下、その境目を含めて、工程を最後まで順番に追っていきます。

手作り結婚指輪のワックス原型を削っている様子
目次

この記事は「順番」だけを追いかけます

指輪の製法の話は論点が重なりやすいので、先に守備範囲をはっきりさせておきます。

この記事が答えるのは、ただひとつ。削ったワックスが、何を経て金属の指輪になるのかです。

ふたりの手で進むのは、工程1と工程2です

工程1:ワックス(ろう)を削って、原型をつくる

最初の工程は、ふたりの手で行います。

なぜワックスなのか。金属より柔らかく、刃物で削れるからです。彫金の経験がなくても、輪郭を出して、角を落として、丸みを整えるところまで自分の手で進められます。削りすぎても、ワックスは溶かして盛り足すことができる素材なので、やり直しがききます。

そして、ここが肝心なところ。この段階でつくった形が、ほぼそのまま金属の指輪になります。内側の当たりの具合も、あえて残した削り跡も、あとの工程で消えるわけではありません。原型づくりは「練習」ではなく、製品そのものの設計工程です。

100&1では、この段階で文字も刻みます。ふたりで文字を刻み、2本を「対」にするのが私たちのやり方です。刻印を最後の仕上げ工程で入れる方法もありますが、ワックスに刻んだ文字は鋳造を経て金属に引き継がれます。手で刻んだ線のゆらぎが、そのまま残るということです。手書きの文字をそのまま刻むという方法と、レーザー刻印との違いは手書きの文字を、そのまま指輪に刻むにまとめています。

完成した手作り結婚指輪のワックス原型

工程2:幅・厚み・サイズを測って確かめる

削り終えたら、測ります。ここもふたりとスタッフで一緒に行う工程です。

なぜ必要か。この先の工程には、後戻りがないからです。次の埋没に進むと、原型は文字どおり失われます。「もう少し細くしたい」「やっぱり厚みが欲しい」と言えるのは、ここが最後です。

測るのは主に3つ。ノギス(キャリパー)で幅と厚み、リングゲージでサイズ。幅と厚みは見た目だけでなく、地金の量=耐久性と地金代に直結します。細く薄くすれば軽く安くなりますが、長く使ううちに変形しやすくもなります。私たちが幅・厚み・重量を見積りに明記しているのは、この関係を隠したくないからです。

もうひとつ。金属は冷えて固まるとき、わずかに縮みます。その分を見込むのは職人の領分なので、おふたりは「この形でいいか」だけを見ていただければ十分です。

工程3:湯口をつけ、埋没材で固め、焼いてワックスを溶かし出す

ここから先は、職人の手に渡ります。設備と経験が必要な工程が続くためです。

湯口(ゆぐち/スプルー)をつける

原型に、棒状のワックスを継ぎ足します。これは飾りではなく、溶けた金属が流れ込むための通り道です。太さや位置は、形と大きさに合わせて職人が決めます。

埋没(まいぼつ)する

湯口をつけた原型に、フラスコと呼ばれる筒をかぶせ、石膏系の埋没材を流し込んで固めます。目的は、ワックスの形を型の内側に写し取ること。この時点では、まだワックスは中に入ったままです。

脱ろう・焼成する

固まった型を電気炉に入れて加熱します。すると中のワックスが溶け出し、燃え尽きて消えます。これが脱ろう。同時に型そのものを焼き固めるのが焼成で、溶けた金属を受け止められる強さを出すための工程です。

この時点で型の中に残っているのは、指輪の形をした空洞だけ。ワックスは、もうどこにもありません。ロストワックスという呼び名は、この瞬間から来ています。

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工程4:溶けた金属を流し込み、型を壊して取り出す

鋳造と鍛造の特徴と向いている人を左右に並べて比較した図
鋳造と鍛造は「金属の形にし方」が違います。

鋳造(ちゅうぞう/キャスト)する

プラチナやゴールドを溶かし、空洞に流し込みます。金属が細部まで行き渡るかどうかは、湯口の設計と型の状態で決まります。

冷やして固める

流し込んだ金属が固まるまで待ちます。ここで「縮み」が起こります。

型ばらし(型出し)をする

冷えたら、型を壊して中身を取り出します。鋳型は一度きりの使い捨てです。ふたりが削った形は、世界にひとつだけの型として消えたということでもあります。

湯口を切り離す

取り出した金属には、通り道だった湯口がくっついたままです。切り離すと、ようやく指輪らしい輪の形になります。ただし表面はまだざらつき、切り口も残っています。

手作り結婚指輪の原型を丁寧に磨いている様子

工程5:荒仕上げから研磨、表面仕上げ、石留めまで

鋳造から出てきたばかりの指輪は、まだ「素材」に近い状態です。ここから、身につけられるものにしていきます。

  1. 荒仕上げ——湯口を切った跡をヤスリで整え、輪郭のゆがみを直し、内側の当たりを取ります。着け心地の土台をつくる工程です
  2. 研磨——粗い番手から細かい番手へ、段階を追って磨いていきます。飛ばすと細かい傷が消えません
  3. 表面仕上げ——鏡面にするのか、マットにするのか、槌目などの表情をつけるのか。デザインによって手数が変わります
  4. 石留め・追加の刻印——ダイヤや誕生石を入れる場合は、ここで留めます。石留めなどのオプションは加工費にあたる部分で、見積書では別項目として並べます
  5. 最終確認——サイズと寸法、表面の状態を確かめて完成です

見積りは制作基本料・地金代・加工費の3層で、工程3から工程5にかかるのが加工費にあたる部分です。

ふたりの手と、職人の手の境目はどこにあるのか

工程を並べたので、担当を整理します。

工程手を動かす人
ワックス原型を削る・文字を刻むおふたり(職人がサポート)
幅・厚み・サイズを測って確かめるおふたり+スタッフ
湯口づけ・埋没・脱ろう・焼成職人
鋳造・型ばらし・湯口の切断職人
荒仕上げ・研磨・表面仕上げ・石留め職人

境目が「測る」と「湯口づけ」の間にあるのは、そこから先が炉と溶けた金属を扱う工程だからです。設備と経験が要る領域で、ここを分業することで、ふたりは形づくりに集中できます。

そして、この境目があるために、指輪はその日に持ち帰れません。焼成と鋳造と研磨は、削り終わってすぐに続けられる作業ではないからです。どのくらい先になるかはデザインや時期で変わるので、制作の流れと即日仕上げと後日渡しの違いでご確認ください。

ただ、職人に渡したあとも、ふたりの手の跡は消えません。削った角の丸みも、刻んだ文字の線も、鋳造を通り抜けて金属になります。手を離すことと、手の跡が消えることは別のことだと思っています。

完成した手作り結婚指輪をお渡ししている様子

よくある質問

ロストワックスという名前は、何が「失われる」のですか?

ワックス(蝋)です。型に埋め込んだ原型を加熱して溶かし出し、燃やして消す工程があり、型の中には指輪の形をした空洞だけが残ります。この「ワックスが失われる」ことから、英語で lost wax、フランス語で cire perdue(失われた蝋)と呼ばれています。

削った原型は、記念に取っておけないのですか?

残念ながら、原型は工程の中で完全に消えてしまいます。型に埋めて焼く段階で溶けて燃え尽きるためで、これはロストワックス製法の仕組みそのものです。ただ、形は指輪に引き継がれます。原型が残らない代わりに、削った跡がそのまま金属になる、と考えていただければと思います。

ふたりが削った形は、どのくらい正確に金属になりますか?

基本的には、ワックスの形がそのまま金属の形になります。だからこそ、削り終わったあとに幅・厚み・サイズを測って確かめる工程を置いています。冷えるときの縮みを見込むのは職人の仕事なので、おふたりは形だけを見ていただければ大丈夫です。

途中で「やっぱり形を変えたい」と言えるのは、いつまでですか?

埋没(型に埋める工程)に入る前までです。ワックスは削るだけでなく盛り足すこともできる素材なので、原型づくりの間は何度でも直せます。逆に、型に埋めて焼いてしまうと後戻りはできません。だから測って確かめる工程を、その手前に置いています。

そもそもキャスト製法と、ロストワックス製法は違うものですか?

ほぼ同じものを指す言葉として使われています。溶かした金属を型に流し込んでつくる方法がキャスト(鋳造)で、その型をワックス原型からつくる方式がロストワックスです。言葉の定義と、なぜ多くの指輪がこの方法でつくられているのかはキャスト製法とはに、鍛造との違いは鋳造と鍛造にまとめました。

ロストワックス製法は、ワックスが消えることで成り立つつくり方です。削って、測って、湯口をつけて、埋めて、焼いて、流し込んで、壊して、磨く。工程の名前だけ並べると無機質ですが、最後に残るのは、ふたりが手で削った形をした金属の輪です。どこまで自分たちでやりたいか、どこは任せたいか。そんなご相談からで構いません。まずはLINEで、お気軽にお声がけください。

この記事を書いた人

三代 二栄のアバター 三代 二栄 アトリエ100&1 創業者

アトリエ100&1創業者。横浜生まれ。宝飾業界約40年、宝石店の企画・コンサルティング20年以上。手作り結婚指輪の仕組みをいち早く確立し、2009年に金沢で創業。3,000組以上の指輪選びに立ち会う。信条は「毎日着けて30年もつか」。

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