妊娠して結婚指輪が入らないとき。サイズを直す前に考えたいこと

店主がカップルの要望をヒアリングする手作り指輪の打ち合わせ

妊娠がわかったころから、結婚指輪がきつい。指の付け根で止まって、もう入らない。——そう気づいたとき、まず思い浮かぶのは「サイズを直さなきゃ」だと思います。

けれど私たちがお伝えしたいのは、その手前のことです。急いで直さないほうがいい場合が多い、という順番の話をさせてください。

工房のスタッフと指輪のサイズについて相談しているところ
目次

先に結論。焦ってサイズを直さない

サイズ直しは、そのときの指に合わせる作業です。指の状態が動いている最中に合わせてしまうと、落ち着いたころに今度は緩い、ということが起こりえます。緩くなれば、また直すことになります。

指がこの先どう変わるかは、体質にも経過にもよります。私たちは指輪屋なので、そこを医学的に断定することはできません。もとの感覚に戻る方もいれば、以前とは違うサイズで落ち着く方もいる、というのが正直なところです。だからこそ、変化のさなかに数字を確定させないほうがいい、と考えています。

おすすめしたい順番は、この4つです。

  1. きついと感じたら、早めに外す
  2. 外している間の身につけ方を決める
  3. 体調と生活が落ち着いてから、何度か測り直す
  4. それでも合わなければ、直すかどうかを考える

急いだほうがいいのは1だけです。2から4は、あわてなくて大丈夫です。

そして、いちばん先に書いておきたいことがあります。指に痛みやしびれがある、急にむくみが強くなった、といったときは、指輪より先に医療機関にご相談ください。自己判断で様子を見ないでください。サイズをどうするかの話は、そのあとで十分間に合います。

「そろそろかな」と思ったら、外していい

指輪を外すことに、うしろめたさを感じる方がいらっしゃいます。結婚指輪だから、つけていないと申し訳ない気がする、と。

でも、外すのは、指輪を大事にする側の行動です。無理につけ続けて指を痛めることも、変形させてしまうことも、どちらもいいことがありません。私たちは、外していい時期があると思っています。

外すかどうかを考える目安として、こんなサインがあります。

  • 外したあと、指の付け根に跡がしばらく残る
  • 指輪を回そうとすると、引っかかって回らない
  • 朝は入るのに、夕方は指の上で動かなくなる
  • 外すときに、力を入れないと抜けない
  • 手を握ったときに、当たって気になる

このうちひとつでも当てはまるようなら、「まだ大丈夫」ではなく「そろそろ外そう」のほうに倒してください。とくに「力を入れないと抜けない」は、次の日には抜けなくなっていることがあります。外せるうちに外す、が結論です。

なお、抜けなくなってしまったときのことも書いておきます。無理に引っ張らないでください。外し方はいろいろな方法が紹介されていますが、指の状態によっては、かえって悪くしてしまうことがあります。外れないときは自己判断せず、医療機関にご相談ください。指輪を傷めたくないというお気持ちも含めて、まずはそちらが先です。そのあとの修理や仕上げ直しは、工房でご相談いただけます。

日常のどんな場面で外すか、という話全般は結婚指輪はつけっぱなしでいい?にまとめました。妊娠中に限らず、外す・つけるの判断は一度考えておくと迷いません。

外している間、どう身につけますか

外すと決めたあと、次に出てくるのが「じゃあ、どこに置くか」です。押し付けるつもりはないので、選択肢を並べます。合いそうなものを選んでください。

ネックレスに通す

私たちがまずご提案するのがこれです。身につけている感覚が残りますし、置き忘れがありません。ただ、チェーンは指輪の重さに耐えられるものを選んでください。細すぎるチェーンは切れることがあります。

置き場所を1か所に決める

外す場所を家の中で固定してしまう方法です。洗面所の小皿、寝室の引き出し、と決めておく。私たちのところに届く「なくしてしまった」というご相談は、「いつもと違う場所に置いた日」のことが多いように思います。リングスタンドでも、小さな箱でもかまいません。

代わりの指輪を用意する

シリコン製のものや、サイズ違いの安価なリングを一時的に使う方もいらっしゃいます。「指に何かある」感覚を保ちたい方には合うと思います。

ペンダントに仕立て直す

指輪をそのままペンダントトップにする、という選択肢もあります。こちらは加工が入るので、戻すことを考えるなら慎重に決めてください。考え方は婚約指輪をペンダントにするという選択に書いています。

ペンダントとして身につけている指輪

どれが正解ということはありません。外している期間は、指輪との距離を少し変えるだけの時間だと思っていただければと思います。

いつ、サイズを判断すればいいか

「落ち着いてから」と書きましたが、それがいつなのかは人によって違います。目安として私たちがお伝えしているのは、体調と生活のリズムが自分で読めるようになってからです。

出産後しばらくは、生活そのものが大きく変わります。抱っこや沐浴で手を使う時間が増え、手を洗う回数も増えます。指のサイズだけでなく、指輪との付き合い方まで変わっていることがあるので、そこも含めて落ち着いてから考えるほうが、決め直しが少なくて済みます。

測るときは、1回で決めないでください。

  • 朝と夜、時間帯を変えて測る
  • 何日かに分けて測る
  • 暑い日と寒い日、両方で測ってみる

指のサイズは、妊娠に関係なく1日の中でも動きます。その仕組みはむくみと指輪のサイズに、実際の測り方の手順は指輪のサイズの測り方にまとめてありますので、測る前に読んでいただけると無駄がありません。

そのうえで、もとのサイズで問題なく入るなら、直す必要はありません。「一度きつくなったから」という理由だけで直す方がいらっしゃいますが、入るなら、そのままで大丈夫です。

金額の目安だけ先に知りたい、という方へ。
見積りシミュレーターなら、地金代と加工費を分けた概算をその場で出せます。来店の前に、数字だけ確かめておくこともできます。相談だけでも大丈夫です。

直すことになったら、何が変わるか

測り直しても合わなかった場合に、はじめてサイズ直しの話になります。ここで知っておいていただきたいのは、直せるかどうか、どこまで直せるかは、デザインと素材で変わるということです。

たとえば、こういう条件では、直し方が限られたり、できないことがあります。

  • 全周にダイヤモンドや石が入っている
  • 模様や刻みが指輪をぐるりと一周している
  • 内側にびっしり刻印が入っている
  • 幅が広く、厚みがある

逆に、上下(指の腹側)に石や模様がないシンプルな形は、比較的直しやすい部類に入ります。どちらが良い悪いではなく、デザインを決める段階で「あとで直せる余地があるか」も一緒に見ておくと、選択肢が残るという話です。

サイズを大きくするときは地金を足すので、地金代が関わります。金は年間平均で2020年の6,122円/gから2025年は17,302円/g(田中貴金属工業・参考小売価格)と上がっているため、同じ作業でも数年前とは金額が変わっていることは、正直にお伝えしています。実際にいくらかかるか、そもそも直せる形かどうかは、結婚指輪のサイズ直しをご覧ください。

なお、「サイズは合っているのに関節で止まる」「関節を越えると回ってしまう」という場合は、妊娠とは別の要因かもしれません。そちらは関節が太い指の指輪選びのほうが役に立つと思います。

ふたりの手に並んだ結婚指輪

これから指輪をつくる方へ

妊娠の予定がある、あるいはこれから考えている段階でご来店くださる方もいらっしゃいます。そういうときは、サイズをぴったりに攻めすぎないことと、あとから直せる余地を残すことを、選択肢としてお話しします。

ただし、これを理由に「幅は細く、飾りは少なく」と勧めることはしません。期間限定の変化のために、何十年つける指輪の形を決めてしまうのは、順番が逆だと考えているからです。気に入った形があるなら、それを選んでいただいて、そのうえで外す時期の過ごし方を用意しておけばいい、と思っています。

お子さまが生まれたあとに、ベビーリングをつくりに戻ってきてくださる方もいらっしゃいます(ベビーリング)。指輪は、渡して終わりのものではありません。生活のほうが変わっていくのに、ずっと同じ場所にあるものです。

そのほかのご質問はよくある質問にもまとめていますので、あわせてご覧ください。

よくある質問

妊娠中にサイズ直しをしてもいいですか?

できないことはありませんが、私たちはおすすめしていません。サイズ直しはそのときの指に合わせる作業なので、指の状態が変わっている最中に合わせると、落ち着いたころに緩くなり、また直すことになる可能性があります。まずは外して、落ち着いてから測り直す順番をおすすめします。

指輪が抜けなくなってしまいました。どうすればいいですか?

無理に引っ張らないでください。指の状態によっては、かえって悪くしてしまうことがあります。自己判断で外そうとせず、医療機関にご相談ください。痛みやしびれ、急なむくみがある場合はとくに急いでください。そのあとの指輪の修理や仕上げ直しは、工房でご相談いただけます。

外している間、ネックレスに通しても大丈夫ですか?

私たちがまずご提案するのもこの方法です。チェーンは指輪の重さに耐えられるものを選んでください。細すぎるものは切れることがあります。ネックレス以外に、置き場所を家の中で1か所に決めてしまう方法もあります。置き忘れのご相談は「いつもと違う場所に置いた日」の話が多いので、場所を固定するだけでも違います。

出産後、いつ測り直せばいいですか?

何週間後、という決まった目安を私たちからお伝えすることはできません。体調と生活のリズムが自分で読めるようになってから、時間帯を変えて何度か測っていただくのが確実です。指輪のサイズの測り方に手順をまとめています。

サイズ直しができない指輪もありますか?

あります。全周に石が入っている、模様が一周している、内側に刻印がびっしり入っている、といった条件では、直し方が限られたり、対応できないことがあります。素材によっても作業が変わります。お手持ちの指輪について知りたい場合は、実物を拝見しての判断になります。

妊娠と出産のあいだ、指輪をめぐって起きることは、ほとんどが期間の決まっている出来事です。外している時間があっても、それで結婚指輪の意味が減ることはありません。急いで決めなくていいことを、急いで決めない。この記事でお伝えしたかったのは、それだけです。手元の指輪をどうするか迷ったら、いちど聞かせてください。まだ何も決めていなくて大丈夫です。

この記事を書いた人

三代 二栄のアバター 三代 二栄 アトリエ100&1 創業者

アトリエ100&1創業者。横浜生まれ。宝飾業界約40年、宝石店の企画・コンサルティング20年以上。手作り結婚指輪の仕組みをいち早く確立し、2009年に金沢で創業。3,000組以上の指輪選びに立ち会う。信条は「毎日着けて30年もつか」。

目次