関節のところで指輪がつっかえる。がんばって通せるサイズにすると、今度は根元でくるくる回ってしまう。工房でよくうかがうお話です。結論を先にお伝えします。回るのは、サイズを測り間違えたからではありません。関節を通すために必要な内径と、指輪がふだんいる根元の内径に、はっきりした差があるからです。 差がある以上、まんまるな指輪をそのまま作れば、根元では必ず余ります。だから考えるべきは「何号にするか」ではなく、余った分をどうやって埋めるか。この記事では、その埋め方を向き・不向きまで含めて正直に並べます。

なぜ回るのか。原因は「関節の内径」と「根元の内径」の差
指輪は、ふだん指の付け根(根元)にいます。でも、そこへたどり着くには関節を通らなければいけません。つまり指輪のサイズは、いてほしい場所ではなく、通り道のほうで決まってしまうわけです。
関節が根元より太い指の場合、こうなります。
- 関節を通れる大きさで作る → 根元では内径が余る → くるくる回る
- 根元にぴったりの大きさで作る → 関節を通らない → そもそも着けられない
どちらかを選ばされているように見えますが、実際にはこの2つのあいだに、いくつも打ち手があります。
知っておいていただきたいのは、内径のほんのわずかな差が、回転にははっきり出るということ。「たった半号でしょう」と感じる差が、一日じゅう手のひら側を向くか、上を向いたままかを分けます。
回ると、何が困るのか
「回るくらい別にいい」と割り切って着けている方もいらっしゃいます。困りごとが出やすいのは、次のようなときです。
- 刻印や石が手のひら側に来る。 せっかくのデザインが見えない位置に落ち着きます
- 重ねづけのラインが合わない。 2本の向きがそろわず、いつも直している状態になります
- 握ったときに石が当たる。 手のひら側に来た石は、物に当たりやすくなります
- 知らないうちに位置が下がる。 回るのは根元に余裕がある証拠。手を下げたときに抜けかけます
逆に言えば、まったく回らないことを目標にすると、今度は着脱が苦しくなります。目指したいのは回転ゼロではなく、向きが保てる程度に抑えるところ。ここは最初に握手しておきたい前提です。
そもそもの測り方の手順は指輪サイズの測り方に、朝と夜でサイズが変わる話はむくみと指輪のサイズにまとめてあります。この記事では、測ってもなお決まらない指の事情だけを扱います。
(関節が腫れて痛む、急に太くなったという場合は、指輪の話より先に医療機関へご相談ください。指輪づくりはそのあとでも遅くありません。)
差を埋める4つの方向と、それぞれの向き・不向き
余った分を埋めるやり方には、大きく4つの方向があります。ひとつで解決することもあれば、組み合わせることもあります。
| 埋め方 | どう効くか | 向いているとき | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| 内側の一部を絞る | 根元にあたる部分だけ内径を小さくする | 関節と根元の差がはっきりしている | 差が大きすぎると関節を越えられない |
| 断面の形を変える | 指に触れる面の形で、滑りと座りを変える | 差が小さめで、着脱のしやすさも欲しい | 滑りやすさと回りにくさは両立しにくい |
| 幅と厚みで支える | 面積と重心で、指輪が倒れにくくなる | デザインの好みが幅広めに寄っている | 幅が広いほど関節を通りにくくなる |
| 調整用のパーツを足す | あとから内径を実質的に詰める | まず今の状態を試したい/変化の途中 | 見た目に出るものもあり、着け外しの手間も増える |
内側の一部を絞る(いちばん素直な考え方)
指輪の内側の、根元にあたる側だけを少し厚くするやり方です。外から見た姿はそのまま、内側にだけ膨らみができるイメージ。関節を通るときはその膨らみが少し抵抗になり、通り過ぎたあとは根元で支えてくれます。
理屈が素直で、効き方も分かりやすい方法です。一方で、関節と根元の差が大きすぎると成立しません。膨らみを大きくするほど関節を越えにくくなり、どこかで頭打ちが来ます。どこまで許容できるかは指の柔らかさや関節の形で本当に人それぞれで、実物を指にはめてみないと判断できません。
断面の形を変える(滑りと座りのトレードオフ)
指輪を輪切りにしたときの形を、断面と言います。内側が丸くふくらんだ形は指あたりがやわらかく、着脱もするりといきます。内側が平らに近い形は、面で接するぶん座りがよくなります。
ここは正直に書きます。着け外しがラクな形ほど、回りやすい傾向があります。 滑りがいいということは、関節も越えやすいけれど根元でも動きやすい、ということだからです。どちらを優先するかは、困っていることの中身で変わります。外すときの引っかかりがつらいのか、回ることのほうがストレスなのか。ここを言葉にしていただけると、設計の方向がすぐ決まります。
幅と厚みで支える(回転そのものを起きにくくする)
内径の差はそのままでも、指輪の姿勢が安定すれば体感の回転は減ります。幅があると指に触れる面積が広がり、リングが傾きにくくなるからです。細いリングが一周してしまうのに幅のあるリングは動かない、という体感の差はここから来ています。
ただし、幅が広いほど関節を通る距離も長くなるので、通りにくさは増します。厚みのほうは耐久性と直結する要素で、削るべきではない部分です(結婚指輪の厚み)。幅ごとの見え方は結婚指輪の幅は何ミリがいい?にまとめました。

調整用のパーツを足す(あとから足せるのが強み)
内側に入れるシリコン製やコイル状のリングアジャスター、内側にバネ状の部品を仕込む加工、開閉できる構造にする加工など、あとから内径を詰める手段もあります。
利点は、指輪本体をいじらずに試せること。妊娠や体調でサイズが動いている時期など、今の指に合わせて作り込むのが不安なときの逃げ道にもなります(妊娠・出産と指輪のサイズ)。
一方で、外から見えてしまうもの、着け外しにひと手間かかるもの、指輪のデザインによっては取り付けられないものがあります。どれが使えるかは、指輪の断面・幅・素材と指の状態の両方で決まります。 実物を拝見しないと可否をお答えできませんし、加工をともなう場合は見積書に加工費として並ぶ項目になります。金額のしくみは料金と素材のとおり、制作基本料・地金代・加工費の3層を単価×数量でお見せします。
金額の目安だけ先に知りたい、という方へ。
見積りシミュレーターなら、地金代と加工費を分けた概算をその場で出せます。来店の前に、数字だけ確かめておくこともできます。相談だけでも大丈夫です。
手作りだからできること、できないこと
100&1は、ふたりでワックス(原型)を削り、それを職人が鋳造して仕上げるつくり方です。完成品から選ぶのではなく、形が決まる前の段階に立ち会える——関節の話に関しては、これがけっこう効きます。
設計の段階でできること
- 内側の一部を絞るかどうかを、削る前に決められる
- 断面の形を、指にはめて確かめながら決められる
- 幅と厚みを、それぞれ別の理由で決められる(幅は見え方、厚みは耐久性)
- 左右の指で条件が違えば、2本を同じ形にしなくてもよい
できないこと
- 関節の太さそのものは変えられません。あくまで「差をどう埋めるか」の話です
- 完成後に地金を足す方向の調整は、削る方向より手間がかかります。先に決めておくほうが無駄が出ません
- 「◯号なら回りません」という言い切りはできません。同じ号数でも指の柔らかさや関節の形で結果が変わります
- 図面や写真だけで可否を判断することもできません。指にはめてみる以外の方法がありません
つくったあとにサイズを動かす道もありますが、それは加工の余地と引き換えです(結婚指輪のサイズ直し)。直せるからいい、ではなく、直さずに済む設計を先に探す。順番としては、こちらをおすすめしています。

来店のときに伝えていただきたい、5つのこと
どれも、その場で答えていただければ十分です。
- いつ測ったサイズか。 何ヶ月も前のものは、参考程度に扱わせてください
- 朝か、夜か。 測った時間帯で結果は変わります。季節も一緒にうかがえると助かります
- どの指か。 左手の薬指とは限りません。利き手かどうかでも条件が変わります
- 外すとき、引っかかるか。 「入るけれど抜けない」のか「入りにくいけれど抜ける」のかで打ち手が変わります
- 今持っている指輪で、回るものがあるか。 あればお持ちください。その1本が、いちばん確かな資料になります
手をよく使うお仕事か、水仕事が多いかといった暮らしの情報も、幅と断面の相談を具体的にしてくれます。

決める前に、必ず確かめたいこと
試着の作法をひとつだけ。通すときと、抜くときを、両方ためしてください。 指輪は入るときより抜くときのほうが引っかかります。関節が太い指では、その差が大きく出ます。「入ったからこのサイズで」と決めると、外せない指輪ができあがることがあります。
それから、一日のうちで指は変わります。可能なら時間帯を変えて2回試していただくのが確実です(むくみと指輪のサイズ)。
その場で決めていただかなくてかまいません。関節の話は、答えが人によってばらばらだからです。急いで決めるより、確かめる回数を増やすほうが結果がよくなります。 ほかのご質問はよくある質問に、進め方は制作の流れにまとめてあります。
よくある質問
関節が太くて、指輪が根元でくるくる回ります。作り直すしかないですか?
作り直す前にできることがあります。内側の一部を絞る、断面の形を変える、調整用のパーツを足すといった方向です。どれが使えるかは、いまお使いの指輪の断面・幅・素材と指の状態の両方で決まりますので、実物を拝見してからのご案内になります。加工をともなう場合は、見積書に加工費として並ぶ項目になります。
回らないサイズにすると、指輪が抜けなくなりませんか?
その心配は正しいです。だから私たちは、回転をゼロにすることを目標にしていません。目指すのは「向きが保てる程度に抑える」ところで、着け外しができることのほうが優先です。試着のときは、通すときと抜くときを必ず両方ためしてください。
何号くらいなら大丈夫、という目安はありますか?
号数では言えません。同じ号数でも、関節の形や指の柔らかさで結果がまったく変わるからです。「◯号なら回りません」と言い切る答えは、残念ながらどこにもありません。指にはめて確かめる以外の方法がない、というのが正直なところです。
幅を広くすれば回らなくなりますか?
幅があると指輪が傾きにくくなるので、体感の回転は減る傾向があります。ただし幅が広いほど関節を通る距離も長くなり、着脱はしにくくなります。相反する要素なので、何種類か試しながら折り合いをつけることになります(結婚指輪の幅は何ミリがいい?)。
関節が太いことは、指輪をあきらめる理由になりません。ただ、既製品の棚から選ぶだけだと打ち手が「号数」しか残らないので、そこで行き詰まってしまうのだと思います。原型から削るつくり方なら、内側も、断面も、幅も、形が決まる前に相談できます。答えを先に持っているふりはしませんが、確かめる場所と時間はいくらでもお出しします。指のことでずっと迷っていらっしゃるなら、まずはその話だけしにいらしてください。
