溶湯鍛造(ようとうたんぞう)

金型等に溶けた金属を流し、プレス等で圧力を掛けて硬度を高める製造技法
解説

溶湯鍛造という製法は「鍛造」と名前が付いている為に本来の鍛造と混同されがちですが、大きく分類すればその製造方法は「鋳造」に近いものです。

元々は強度や精度を求める自動車業界などの工業技術で、アルミニウムのような柔らかい素材の硬度を高めることで、軽くて強い金属を製造することが可能になりました。

近年までジュエリー業界ではこのような製法を用いることはありませんでしたが、海外のブランドが採用し、それを「鍛造商品」と称して販売を始めてから日本でも見かけるようになりました。

最近の宝飾業界では、製造方法に関わらずビッカース硬度HV200前後または超えるものを「鍛造」と表現することが多くなっています。しかし、HV200という硬度はステンレスシンクや空気中に舞う塵よりも低く、生活の中で装着していれば必ずキズが付いていきます。「鍛造=硬い=傷付かない」というイメージから鍛造を選ぶ人も多くいる中で、購入後の変形や傷に疑問の声もよく耳にしますが、硬度を知れば当然のことなのです。
長所
  • 本来の鍛造と比較して、安価に金属の硬度を高めることができます。
  • 型を用いて加工するので大量生産に向いています。
短所
  • 本来の鍛造程の硬度は得られません。
  • 指輪のサイズ変更等で修正する際、再度熱を入れることで焼きなましが起こり、硬度が低下します。

この用語集は、アトリエ100&1 並びに アトリエ花風里 において使われる宝飾品用語を「基本に忠実に、初心者にも分かり易く」宝飾業界30年超えのオーナーが独自の見解も含め解説するものです。

お客様が宝石のご購入を検討される際に、業者が知るべき専門知識やデータを詳しく知る必要はありませんが、正しい知識を持つことは比較検討される際に有効な判断材料となります。
業界には(販売戦略として意図的に)消費者に誤解を与えるような表現をしている場合や、一般的に間違って浸透している用語・知識などもあります。「間違った認識で後悔してほしくない」「正しい知識で正しく商品を選択してほしい」との願いから、特に解りやすくお伝えしたいと思います。